工工四
歌詞
蘭のにほひごころ 朝夕思とまれ
いつまでも人の 飽かぬごとに
訳
蘭の芳しい匂いのように朝夕思いとめて、
いつまでも人に飽きられないように(心掛けましょう)。
蘭
- 沖縄の島々には100種余りの蘭の原種が生息している。
思とまれ
- 思いとめて
解説
朝夕通して上品で芳しい蘭の香りのように、人も常に自己を磨いていかなければ、やがて飽きられてしまうものだといった教訓的な要素を含んだ歌曲です。
最も古い三線楽譜である『屋嘉比工工四』(※1)には本曲が収録されていますが歌詞は異なり、古典音楽「中作田節」とほぼ同じ歌詞の内容(※下記参照)で詠われています。
「伊集早作田節」がどのように派生してきたか定かではありませんが、『琉歌百控』(※2)に収められている「中作田節」の出自には「中城間切伊集村」と記されていることから「伊集」の節名をとる本曲との関連性を紐づけるものではないかと考えられます。
また、琉球王国時代に編成された行政区の「中城間切」は、現在の中城村、北中城村~うるま市の一帯を指しており、このエリアが蘭の繁殖地であることに所以があると考えられます。
屋嘉比工工四(※1)
琉球音楽家の屋嘉比朝寄(1716-1775)によって編み出された記譜法により創案された現存する最も古い三線楽譜です。(117曲編纂)
『琉歌百控』(※2)
上編「乾柔節流」、中編「独節流」、下編「覧節流」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂された最も古い琉歌集です。
屋嘉比工工四に収録されている「伊集早作田節」の歌詞は以下の通りです。
伊集早作田節
月夜や月夜ともて 明ける夜や知らぬ
わらべ腕枕 にやうちほれて
訳
月夜、月夜だと思って夜が明けるのも忘れ、
若い女の腕枕にうつつを抜かして(夜を明かしてしまった)。
わらべ
歌詞の文脈から子供ではなく、若い女を指している。
にや
もう。
うちほれて
うつつを抜かして。
補足
ちらし
「伊集早作田節」は大昔節(※1)の「長ぢやんな節」のちらし(※2)として演奏されます。
「長ぢやんな節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 首里天ぎやなししゅゆゐてぃんぢゃなし とももとよちやうはれとぅむむとぅゆちょわり 御万人のまぎりうまんちゅぬまじり 拝ですでら ...
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大昔節(※1)の分類
ちらし(※2)
つないで演奏する終結部の楽曲。
楽曲の熱を徐々に散らしながらおさまりをもたせる構成をとります。
御供ともいいます。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「伊集早作田節」が舞踊曲として演奏される「揚作田節(揚作田)」について解説しています。
「揚作田節(揚作田)」 - 古典舞踊/二才踊り
揚作田節:歌詞 二葉から出でてふたふぁからいんぢてぃ 幾年が経たらいくとぅしがふぃたら 巌を抱き松のいわをぅだちまつぃぬ もたえ美らさむていちゅらさ /\ 訳 二葉から生し ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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