古典音楽

「仲順節」- 古典音楽

工工四

三線を再生印刷・保存

 

歌詞

 

別れても互にわかりてぃんたげに 御縁あてからやぐゐんあてぃからや

糸に貫く花のいとぅにぬくはなぬ 散りてぬきゆみちりてぃぬちゅみ

 

別れることがあってもご縁があるからには、

糸で貫き通した花のように二人が離れ離れになることはないでしょう。

 

解説

仲順節ちゅんじゅんぶし」はいつぞや互いに結び合った二人が別れを惜しみ、糸でつらぬいた花に再会の願いを込めてまれた歌曲です。

古典舞踊「本貫花むとぅぬちばな」にも見られるように、かつて沖縄の女性は糸を貫いた花飾りに愛する人への結びつき(ご縁)を託していたのでしょう。

最古の琉歌集である『琉歌百控りゅうかひゃっこう』(※1)には原歌が収録されており、出自しゅつじが中城間切仲順村(現・中頭郡北中城村仲順なかがみぐんきたなかぐすくそんちゅんじゅん)と記されています。

 

水面に仲良く浮かんだ花

仲良く浮かんだ花

 

補足

 

ちらし

仲順節ちゅんじゅんぶし」は昔節んかしぶし(※1)である「首里節しゅいぶし」のちらし(※2)として演奏されます。

 

首里城内の写真
「首里節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   ませこまてをればますぃくまてぃをぅりば ここてるさあものくくてぃるさあむぬ おす風とつれてうすかじとぅつぃりてぃ 忍 ...

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昔節んかしぶし(※1)

古典音楽の中でも古くから存在し、演奏時間、演奏技術ともに大曲である楽曲を大節うふぶしと呼び、創作された年代や曲想により、昔節んかしぶし大昔節うふんかしぶし中昔節なかんかしぶしに分類されます。

作田節ちくてんぶし」、「ぢやんな節ぢゃんなぶし」、「首里節しゅいぶし」、「しよどん節しゅどぅんぶし」、「暁節あかつぃちぶし」の五曲を総称して、昔節んかしぶしまたは前の五節めえぬいつぃふしと呼んでいます。

また、「茶屋節ちゃやぶし」、「昔蝶節んかしはびるぶし」、「長ぢやんな節ながぢゃんなぶし」、「仲節なかぶし」、「十七八節じゅうしちはちぶし」の五曲を総称して、大昔節うふんかしぶしまたは後の五節あとぅぬいつぃふしと呼びます。

 

ちらし(※2)

つないで演奏する終結部の楽曲。

楽曲の熱を徐々に散らしながらおさまりをもたせる構成をとります。

御供ともいいます。

 

古典舞踊

古典舞踊のカテゴリーでは、「仲順節ちゅんじゅんぶし」が舞踊曲として演奏される「天川あまかー」の演目について解説しています。

 

琉球古典舞踊 女踊り「天川」のイラスト
「天川」 - 古典舞踊/女踊り

天川節:歌詞   天川の池にあまかわぬいちに 遊ぶおしどりのあすぃぶうしどぅいぬ 思羽の契りうむいばぬちぢり よそや知らぬゆすやしらん   訳 天川の池にいる仲睦なかむつまじいおし ...

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組踊くみうどぅい

仲順節ちゅんじゅんぶし」は平敷屋朝敏へしきやちょうびんによって創作された組踊くみうどぅい(※2)「手水の縁てぃみじぬいん」の”愛を誓った二人が再会を約束する”一場面で演奏されます。

 

琉歌百控りゅうかひゃっこう』(※1)

上編「乾柔節流けんじゅうせつりゅう」、中編「独節流どくせつりゅう」、下編「覧節流らんせつりゅう」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂へんさんされた最も古い琉歌集です。

 

組踊くみうどぅい(※2)

琉球王国時代の1718年に踊奉行おどりぶぎょう(式典の際に舞台を指揮、指導する役職)の任命を受けた玉城朝薫たまぐすくちょうくんにより創始された歌舞劇かぶげきです。

台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。

 

略歴

平敷屋朝敏へしきやちょうびん(1700-1734)
沖縄県那覇市首里金城村に生まれる。(首里士族の家系)
和文学者、和文物語作者
作品には組踊くみうどぅいの「手水の縁てぃみじぬいん」をはじめ、「若草物語わかくさものがたり」、「苔の下こけのした」、「萬歳まんざい」、「貧家記ひんかき」、他に和歌や琉歌を残す。

 

「手水の縁」

花見からの帰り道に山戸やまとぅは波平玉川で髪を洗っていた美しい玉津たまつぃと出会い心惹かれます。

山戸やまとぅ玉津たまつぃの手水(愛の誓い)が欲しいと申し出ます。戸惑っていた玉津たまつぃも次第に真剣な彼の姿に惹かれるようになります。

しかし当時の社会では二人の行為はご法度(密通の罪)であり、とうとう玉津たまつぃは知念の浜で処刑されることになります。

そのことを聞きつけた山戸やまとぅは急いで浜に駆けつけ、命がけで彼女を助けようと役人に乞い願います。

最後は山戸やまとぅの心情にほだされた役人たちが二人を逃がすことにし、見事に恋が成就する物語です。

 


 

参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた豆電球ほどの妖怪です。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

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