舞踊

「本貫花」 - 古典舞踊/女踊り

2019年8月3日

金武節ちんぶし(前段):歌詞

 

春の山川にはるぬやまかわに 散り浮ぶ桜ちりうかぶさくら

掬い集めてどすぃくいあつぃみてぃどぅ 里や待ちゆるさとぅやまちゅる

 

春の山川に散り浮かぶ桜の花を

すくい集めて愛しい人を待ちましょう。

本貫花むとぅぬちばな」では、桜を題材に表現していますが、本来、貫花ぬちばなに使われている紅白の花は、つつじの花ではないかといわれています。

春蘭しゅんらんな桜の情景と自身のはずむ恋心を映し重ね、美しい花を総称して桜に託しているのでしょう。

 

 

白瀬走川節しらしはいかわぶし(後段):歌詞

 

白瀬走川にしらしはいかあに 流れゆる桜ながりゆるさくら

掬て思里にすぃくてぃうみさとぅに 貫きやり佩けらぬちゃいはきら

 

赤糸貫花やあかちゅぬちばなや 里にうち佩けてさとぅにうちはきてぃ

白糸貫花やしるちゅぬちばなや よゑれ童よぅいりわらび

 

白瀬走川に流れる桜の花をすくい糸に貫き列つらぬきつらね、

愛しい人の首におかけしましょう。

赤糸でつくった貫花ぬちばなは、愛しい人の首にかけ、

白糸でつくった貫花ぬちばなは、子供たちにあげましょう。

 

本貫花の舞踊写真

-琉球古典舞踊 女踊り「本貫花」-

 

本貫花むとぅぬちばな」:解説

 

あらまし

春の山に散っている花、川面を流れている花を集めて、けなげに愛する人を待つ。

貫花ぬちばなのゆかしさを表現しながら品よく展開し、春の心地よさと花の美しさをさわやかに演じていきます。

 

みどころ

演目は、「金武節ちんぶし」と「白瀬走川節しらしはいかわぶし」の二曲で構成されています。

前段「金武節ちんぶし」で、紅白の貫花ぬちばなを肩にかけて《角切りすみきり※1》で歩み、貫花ぬちばなのゆかしさを表現しながら品よく展開していきます。

掬い集めてどすぃくいあつぃみてぃどぅ 里や待ちゆるさとぅやまちゅる”の一節では、桜をすくうシーンに《抱き手だちでぃ※2》を思わせる所作を演じ、つぎに《戴み手かみでぃ※3》の表情をみせてから《こねり手※4》へ移る一連の振りに、春の心地よさと桜の美しさをさわやかに描いていきます。

後段「白瀬走川節しらしはいかわぶし」では、川を流れゆく桜の様子を手の振りにあらわし、”掬て思里にすぃくてぃうみさとぅに”の一節で、肩にかけている貫花ぬちばなを両手に持ちながら軽やかに踊り、身体全体で貫花を愛おしみながら扱います。

赤糸貫花やあかちゅぬちばなや 里にうち佩けてさとぅにうちはきてぃ”の一節では、恋する女性の思いを純真に手踊りであらわし、”白糸貫花やしるちゅぬちばなや よゑれ童よぅいりわらび”の一節で、再び手にとった貫花ぬちばなを優しくあつかいながら放り出して、舞台においたまま踊りを納めます。

 

角切りすみきり※1》

踊り手が舞台を斜めに、下手奥しもておくから上手手前かみててまえへ向かって対角線上に歩み出ること示します。

 

抱き手だちでぃ※2》

両手で赤子を抱いているような形をとる所作。

 

戴み手かみでぃ※3》

両手を右上にあげ、左の方へまわしながら手首をこねる所作。

神から幸せを戴いたことを表現します。

 

《こねり手※4》

手首をやわらかくまわす動き。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

本貫花むとぅぬちばな」の名の由来

演目名の「本貫花むとぅぬちばな」の「むとぅ」は”元祖、本来”という意味になります。

明治の頃、玉城盛重たまぐすくせいじゅう師が軽快な「武富節たきどぅんぶし」と「白瀬走川節しらしはいかわぶし」の歌詞を使って新しい舞踊「貫花小」をつくり人気を集めたため、雑踊りぞううどぅいを「貫花ぬちばな」と呼び、古典舞踊の方は「本貫花むとぅぬちばな」と呼ばれるようになりました。

両方の演目内容を比較してみると衣装や曲想は大きく異なりますが、紅白の貫花ぬちばなを使用するところは類似しており、歌詞の内容も重なるところがあります。

 

※略歴

玉城盛重たまぐすくせいじゅう(1868-1945)
沖縄県那覇市首里に生まれる。
近代の沖縄芸能の大化であり、古典正統継承者。
代表する作品に、雑踊りの「谷茶前節たんちゃめーぶし」、「浜千鳥はまちどり」、「むんじゅる」、「貫花ぬちばな」、「花風はなふう」、「加那ヨーかなよー」、「あやぐ」、「松竹梅しょうちくばい」、「金細工かんぜーくぅ」、「川平節かびらぶし」がある。

 

編集後記

 

花の命

花に愛しい人への想いを託し、女性の一途な恋心を描いた演目。

植物学者曰(いわ)く、ある種の花が咲くには、夜の時間の冷たさと闇の深さが不可欠であり、二十四時間、光をあてても花は咲かないそうです。(参考:五木 寛之氏「生きるヒント」より)

人の恋情も似たようなところがあって、愛する人を心待ちわびる女性の心象を「貫花」に託しているのでしょうか。

散りゆく花の命に限りあれど、芸に果てはなし。

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

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