古典舞踊

「本貫花」 - 古典舞踊/女踊り

金武節:歌詞

 

春の山川にはるぬやまかわに 散り浮ぶ桜ちりうかぶさくら

すくい集めてどすぃくいあつぃみてぃどぅ 里や待ちゆるさとぅやまちゅる

 

春の山川に散り浮かぶ桜の花を

すくい集めて愛しい人を待ちましょう。

 

白瀬走川節:歌詞

 

白瀬走川にしらしはいかわに 流れゆる桜ながりゆるさくら

すくて思里にすぃくてぃうみさとぅに ぬきやりはけらぬちゃいはきら

 

赤糸貫花やあかちゅぬちばなや 里にうちはけてさとぅにうちはきてぃ

白糸貫花やしるちゅぬちばなや よゑれ童よぅいりわらび

 

白瀬走川に流れる桜の花を

すくって愛しい人に首飾りを作ってお掛けしたい。

赤糸でつくった貫花ぬちばなは愛しい人の首にかけ、

白糸でつくった貫花ぬちばなは子供にさずけましょう。

白瀬走川

  • 久米島の宇江城岳うえぐすくだけ(標高309m)から兼城湾かねぐすくわんに流れる白瀬川のこと。

 

琉球古典舞踊 女踊り「本貫花」のイラスト

琉球古典舞踊 女踊り「本貫花」

 

演目:解説

 

あらまし

本貫花むとぅぬちばな」は春蘭しゅんらんな桜の情景を自身のはずむ恋心に映し重ねて表現した演目です。

春の山に散っている花、川面を流れている花を集めてけなげに愛する人を待つ。

貫花ぬちばなのゆかしさを表現しながら品よく展開し、春の心地よさと花の美しさをさわやかに演じていきます。

 

みどころ

演目は「金武節ちんぶし」と「白瀬走川節しらしはいかわぶし」の二曲で構成されています。

前段「金武節ちんぶし」で紅白の貫花ぬちばなを肩にかけて《角切りすみきり※1》で歩み、貫花ぬちばなのゆかしさを表現しながら品よく展開していきます。

掬い集めてどすぃくいあつぃみてぃどぅ 里や待ちゆるさとぅやまちゅる”の一節では、桜をすくうシーンに《抱き手だちでぃ※2》を思わせる所作を演じ、つぎに《戴み手かみでぃ※3》の表情をみせてから《こねり手※4》へ移る一連の振りに春の心地よさと桜の美しさをさわやかに描いていきます。

後段「白瀬走川節しらしはいかわぶし」では川を流れゆく桜の様子を手の振りにあらわし、”掬て思里にすぃくてぃうみさとぅに”の一節で肩にかけている貫花ぬちばなを両手に持ちながら軽やかに踊り、身体全体で貫花をかなでながら扱います。

赤糸貫花やあかちゅぬちばなや 里にうち佩けてさとぅにうちはきてぃ”の一節では恋する女性の思いを純真に手踊りであらわし、”白糸貫花やしるちゅぬちばなや よゑれ童よぅいりわらび”の一節で再び手にとった貫花ぬちばなを優しくあつかいながら放り出して舞台においたまま踊りを納めます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

角切りすみきり※1》

踊り手が舞台を斜めに、下手奥しもておくから上手手前かみててまえへ向かって対角線上に歩み出ること示します。

 

舞台図

舞台図

 

抱き手だちでぃ※2》

両手で赤子を抱いているような形をとる所作。

 

戴み手かみでぃ※3》

両手を右上にあげ、左の方へまわしながら手首をこねる所作。

神から幸せを戴いたことを表現します。

 

《こねり手※4》

手首をやわらかくまわす動き。

 

川沿いに咲く沖縄の桜

沖縄の桜(イメージ)

 

補足

 

節名の由来

演目名の「本貫花むとぅぬちばな」の「むとぅ」は”元祖、本来”という意味になります。

明治の頃、玉城盛重たまぐすくせいじゅう師が軽快な「武富節たきどぅんぶし」と「白瀬走川節しらしはいかわぶし」の歌詞を使って新しい舞踊「貫花小ぬちばなぐゎ」をつくり人気を集めたため、この雑踊りぞううどぅい(※5)を「貫花ぬちばな」と呼び、古典舞踊の方は「本貫花むとぅぬちばな」と呼ばれるようになりました。

 

雑踊りぞううどぅい(※5)

明治16年(1883)頃、琉球芸能が初めて入場料を取って興行こうぎょうがおこなわれて以来、芝居小屋で創作振り付けられた近代の舞踊。

琉球王朝が崩壊した後、歓待芸能を職としていた者が率いて踊りを披露していました。

 

略歴

玉城盛重たまぐすくせいじゅう(1868-1945)
沖縄県那覇市首里に生まれる。
近代の沖縄芸能の大化であり、古典正統継承者。
代表する作品には、「谷茶前節たんちゃめーぶし」、「浜千鳥はまちどり」、「むんじゅる」、「貫花ぬちばな」、「花風はなふう」、「加那ヨーかなよー」、「あやぐ」、「松竹梅しょうちくばい」、「金細工かんぜーくぅ」、「川平節かびらぶし」がある。

 

古典音楽

古典音楽のカテゴリーでは、「金武節ちんぶし」、「白瀬走川節しらしはいかわぶし」の曲目について解説しています。

 

クバ笠
「金武節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   こばや金武こばにくばやちんくばに だけや安富祖だけだきやあふすだき やねや瀬良垣にやにやしらかちに はりや恩納はゐや ...

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白瀬川(久米島)
「白瀬走川節」- 古典音楽

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参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた豆電球ほどの妖怪です。

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