中城はんた前節:歌詞
飛び立ちゅる蝶 先づよ待て連れら
花のもと吾身や 知らぬあもの
訳
飛び立とうとしている蝶よ、一寸お待ちください。
花が咲いている場所を知らないので、わたしも一緒に連れて行ってくださいな。
柳節:歌詞
柳は緑 花は紅
人はただ情 梅は匂
訳
柳は緑が映えて、花は紅が美しい。
人にとって大切なのは情の心であり、梅は匂いによって尊ばれる。
演目の構成
御冠船(※1)
琉球国王の即位時に、冊封使(明、清の使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。
皇帝より授けられた冠を携えて来航したことから「御冠船」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。
演目:解説
あらまし
「柳」は自然の摂理に人間の思想を重ね合わせ、花籠にのせた採り物を次々に持ち替えてテーマをたどる構成で演じられます。
華やかな紅型衣装に小道具の色彩感が鮮やかに色映えする演目です。
みどころ
前段「中城はんた前節」の前奏で花籠を紅白のひもで肩から担ぎ、《角切り※2》で静かに歩み登場します。
歌い出しの”飛び立ちゅる蝶”では、ひらりひらりと飛び回る蝶に向かって語りかけるように前後左右に移動して舞い、その後、舞台中央奥で後ろ向きになり花籠を置きます。
後段「柳節」の前奏では柳を手に持って立ちなおり、”柳は緑”の一節で振り返ると同時に手にした柳の枝をサッと前方へ投げ伸ばして弧を描き、巧みに緑映えを表現します。
次節の”花は紅”では真紅の花に情感をもたせ味わい深く踊り、続いて"人はただ情"の一節では両手を腰の前方に組み合わせ《思い入れ※3》をおこない、人生の在り方を諭すように淑やかに踊ります。
最後は梅の小枝を手にして、ほのかな香りをひと枝に託すことでこの世のはかなさをあらわします。
各採り物のパートで歌われる”エイヤ エイヤ”、”ユリティク ユリティク”の囃子では、小道具を手に持ったまま上体を《なより※4》、前へ歩みながら足で調子をとって演目を色付けしています。
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
《角切り※2》
踊り手が舞台を斜めに、下手奥から上手手前へ向かって対角線上に歩み出ること。
《思い入れ※3》
心に深く思いをそそぎこむ所作。
《なより※4》
身体全体をなよやか(柔らかに)動かす仕草。古来から伝わる祭祀舞踊の技法。
古典女七踊り
補足
祝歌、魔除け
沖縄では蝶を”ハベル”と呼び、天からお仕えする使者であるという言い伝えが古くより残されています。
はべるの言葉を探っていくと、古典日本語では「侍(はべる)=そばにいる」の連体形で「お仕えする」という意味になります。
世界各国を例にみるとギリシア語では「蝶」を"プシュケ"と呼び、「魂」の同義語にあたります。また、イタリアのローマでは棺(ひつぎ)に「魂」を吹き込むものとして「蝶」の姿が大切に刻印されています。
不思議なことに古くから死者が「蝶」になって帰ってくるという言い伝えが他国の文明圏にも共通しているのです。
「柳節」は古くから祝歌や魔除けの曲として神聖に扱われていたとされ、歌詞にみる人生の本質を解いた内容に結びつけると、この演目が創作された背景には神聖な意味合いが込められているのではないかと考察します。
古典音楽
古典音楽のカテゴリーでは、「中城はんた前節」、「柳節」の曲目について解説しています。
「中城はんた前節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 飛び立ちゅる蝶とぅびたちゅるはびる 先づよ待て連れらまづぃゆまてぃつぃりら 花のもと吾身やはなぬむとぅわんや 知らぬあものしら ...
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「柳節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 柳は緑やんなぢわみどぅり 花は紅はなはくりなゐ 人はただ情ふぃとぅわただなさき 梅は匂うむみはにをぅゐ 訳 柳は ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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