中城はんた前節:工工四
歌詞
飛び立ちゅる蝶 先づよ待て連れら
花のもと吾身や 知らぬあもの
訳
飛び立とうとしている蝶よ、一寸お待ちください。
愛しい方のいる場所を知らないので、わたしも一緒に連れて行ってくださいな。
楽曲の解説
「中城はんた前節」は、宮廷の祝賀行事の座開きとして、琉球国王の御前で演奏されていました。
一般的に「かぎやで風節」を”御前風”と特称しますが、「中城はんた前節」、「恩納節」、「特牛節」、「長伊平屋節」においても国王の御前で演奏されていた史実が記されています。今日ではお祝いの宴席で初めに演奏する習わしとなっており、この五曲を総称して”御前風五節”と呼んでいます。
曲名の由来は、沖縄本島から西へ約100kmのところにある久米島が発祥とされています。
さかのぼること15世紀、久米島には伊藤索という名の一族が島を統治しており、その時代に建てられた宇江城(※1)のことを別名、中城と言います。
はんた前の”はんた”とは、沖縄の言葉で「端」という意味を持ちます。
「中城はんた前節」の発祥である原歌は以下の通りです。
はんた前の下り 溝割てどよこす
三十ませ三ませ 真水こめて
訳
中城(宇江城)周辺の傾斜地に、溝をつくって水を引く。
たくさんの田んぼに水がいきわたり、なんと素晴らしいことか。
宇江城(※1)
久米島は15か所以上の城があると言われており、この宇江城は沖縄県内の城の中で最も高い場所(標高310mの宇江城岳の山頂)に築かれました。
補足
「中城はんた前節」は、古典舞踊 - 女踊り 「柳」 のページでも詳しく説明しています。
下記リンクからご参照ください。
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「柳」 - 古典舞踊/女踊り
中城はんた前節なかぐすぃくはんためーぶし(前段):歌詞 飛び立ちゅる蝶とぅびたちゅるはびる 先づよ待て連れらまづぃゆまてぃつぃりら 花のもと吾身やはなぬむとぅわんや 知らぬあものしらんあ ...
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参考文献
・琉球装束(その一) 舞踊と装い 古典女踊りの装い - 著者:金城 光子、 祝嶺 恭子
・沖縄の踊りの表現特質に関する研究 - 著者:金城 光子
・琉球古典音楽の表層―様式と理論 - 著者:大湾 清之
・花かんざし - 発行:冠船流川田琉球舞踊団
・沖縄新民謡の系譜 - 著者:大城 學
・沖縄舞踊の歴史 - 著者:矢野 輝雄
・琉球舞踊の世界 - 著者:勝連 繁雄
・ふるさとの歌 - 著者:与那嶺 政牛
・琉球芸能教範 - 著者:池宮喜輝
・原日本・沖縄の民俗と芸能史 - 著者:三隅 治雄
・琉球音楽歌三線筝曲綜譜 - 著者:川田 松夫
・琉舞手帖 - 著者:大道 勇
・舞踊曲工工四 - 発行:琉球古典音楽 野村流保存会
・沖縄祭祀資料 - 発行:データベース
・琉球舞踊 石川文洋写真集 - 著者:石川文洋
・琉球舞踊(鑑賞の手引き) - 発行:沖縄県商工労働部観光・文化局文化振興課
・琉球舞踊 - 発行:沖縄県商工労働部観光・文化局文化振興課
・文書・写真資料 - 管理:那覇歴史博物館
・国指定文化財等データベース - 管理:文化庁