かぎやで風節:歌詞
今日の誇らしやや 何にぎやな譬てる
莟で居る花の 露行逢た如
訳
今日の喜びは何にたとえることができましょう。
それはまるで花のつぼみが朝露をうけて、パッと花開くような心のようです。
「かぎやで風」:解説
あらまし
お祝いなど喜びの場、座開き(はじまり)に踊られる祝儀舞踊です。
「かぎやで風」は琉球舞踊の基本の形や技法が集約されており、人生の喜び、祝福をことほぎながら踊っていきます。
長寿、子孫繁栄、五穀豊穣を願う老人踊りとして受け継がれてきました。
みどころ
荘重な音色と共に威風漂う歩みで登場し、演目全体を通してみる洗練された一連の所作に、先師先人の品位と気魄が感じられます。
翁の姿は、金入緞子丸頭巾(リンファーモー)をかぶり、白の口ひげやあごひげをつけ、緞子衣装に広帯をしめ、白足袋をはき、手に扇を持っておごそかに踊ります。
媼が加わる場合は、白髪を髪結いするか、または後ろに垂らし、緞子衣装をうちかけ、白足袋をはき、手に団扇を持って気品高く踊ります。
基本は、翁と媼の二人で演じられますが、演出にはいくつかの踊りの体系がみられます。
- 翁と媼が子や孫を引き連れて登場する型
- 翁と媼のみが踊る型
- 一人で踊る型
- 複数の若者が正装して踊る型
- 若い夫婦が仲睦まじく喜びを表現し、踊る型
補足
「かぎやで風」の歴史
「かぎやで風」は、琉球王府の国王の御前で演じられたことから別名「御前風」と呼ばれています。
尚敬王の時代(1719年)におこなわれた冊封式典において、国王の御前で演じられた記録『中山傳信録』があり、古くは演目を披露する前に国を賛美する前口上(老人申上候意趣)が存在していました。
琉球国由来記(1713年)では、「舞ハ、コネリト云フ。遊鼓ヲ打ツ也」と記述されており、「かぎやで風」の踊りは古代から伝わる祭祀舞踊の儀礼の象徴である「神舞い」の形をうかがうことができます。
※略歴
■尚敬王(1700-1752)
第二尚氏王統の第13代国王。
教育と文化振興に力を入れ、琉球王国を文化大国へ導いた名君で、現代に伝承される芸能文化の多くがこの時代に生み出される。
1719年には台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された組踊(国の重要無形文化財、世界のユネスコ無形文化遺産)が誕生。
「かぎやで風節」は、古典音楽のページでも別途、詳しく説明しています。下記リンクからご参照ください。
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「かぎやで風節」- 古典音楽
かぎやで風節かぢゃでぃふうぶし:工工四 画像クリック→保存印刷できます。 歌詞 今日の誇らしややきゆぬふくらしゃや 何にぎやな譬てるなうにじゃなたてぃる 莟で ...
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編集後記
つなぐ祈り
連綿たる命の炎を燃やし継承されてきたいにしえの舞い。
荘重な響きにより舞台空間に魂が吹きこまれ、威風のある舞いは先人たちの切実な祈りが込められています。
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参考文献:一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。 1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...
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