舞踊

「綛掛(かせかけ)」 - 古典舞踊/女踊り

2019年8月3日

干瀬節ふぃしぶし(前段):歌詞

 

七読と廿読ななよぅみとぅはてん 綛掛て置きゆてかしかきてぃうちゅてぃ

里が蜻蛉羽さとぅがあけずぃばに 御衣よすらぬんしぅゆしらに

 

七読や廿読の細かい縦糸をかせに掛けて、

愛しいあなたのためにとんぼの羽のように美しい着物を織ってさしあげましょう。

 

七読と廿読ななゆみとはてん

ゆみ」とは、織り機に掛ける縦糸(綛糸かしいとぅ)の本数を示した単位で80本を一読ちゅゆみとし、七読ななゆみ廿読はてん(二十読)までの単位があります。

最も単位の多い廿読はてん(二十読)は、1600本の糸で織られています。

 

七尺節しちしゃくぶし(後段):歌詞

 

枠の糸綛にわくぬいとぅかしに 繰り返し返しくりかいしがいし

掛て面影のかきてぃうむかじぬ 勝て立ちゆさまさてぃたちゅさ

 

綛掛て伽やかしかきてぃとぅじや ならぬものさらめならんむぬさらみ

繰り返し返しくりかいしがいし 思ど増るうみどぅましゅる

 

糸巻き(枠)の糸を綛に繰りかえし返していると、あなたの面影が重なって想いが募ります。

綛を掛けて想いをまぎらわそうとするけど、慰めにもなりません。

繰り返すごとにあなたへの想いは増していきます。

 

さあさあ節:歌詞

 

綛もかけみちてかしんかきみちてぃ できやよ立ち戻らでぃちゃよたちむどぅら ”さぁ さぁ”

里や我が宿にさとぅやわがやどぅに 待ちゆらだいものまちゅらでむぬ ”さぁ さぁ”

 

糸も巻き終わりにして、そろそろ帰りましょうか。

愛しいあなたも家で待ちかねていらっしゃるでしょう。

 

演目の構成

三曲目(入羽)を「さあさあ節」または「百名節ひゃくなぶし」で納める構成もありますが、近年は演奏せずに省略して演じることが多くなりました。

 

綛掛の舞踊写真

-琉球古典舞踊 女踊り「綛掛(かせかけ)」-

 

綛掛かしかき(かせかけ)」:解説

 

あらまし

昔の沖縄の女性は、家族の着物を糸作りから仕立てるまでの全行程を手仕事でおこなっていました。

繰り返しおこなう単調な労働の中に、愛しい人を想う心象風景を映し重ねて描かれています。

小道具の綛枠かせわくと糸巻にりこまれた黒漆くろうるしに、あざやかな糸のコントラスト(赤・白・青・黄・緑)。

日常で働く姿を、紅型の地色に右肩袖ぬきにした胴衣どぅじんで表現し、女性の芯の強さのなかに奥ゆかしさと品位を内包ないほうして描いていきます。

 

みどころ

演目は、「干瀬節ふぃしぶし」、「七尺節しちしゃくぶし」の二曲で構成されます。

前段「干瀬節ふぃしぶし」の前奏にあわせて、《角切りすみきり※1》で歩み、基本立ちしてから”七読と廿読ななよぅみとぅはてん”の歌い出しで《思い入れ※2》を込めます。

里が蜻蛉羽さとぅがあけずぃばに”の一節より、愛する人へ上等じょうとうな着物をつくって差し上げたいと思う女性の情緒じょうちょをあらわしていきます。

後段「七尺節しちしゃくぶし」は、手に持つ小道具のかせ(枠)と糸巻をつかい情緒豊かに表現し、女性の深い心の内を描いていきます。

掛て面影のかきてぃうむかじぬ”の一節では、かせ(枠)に繰り返し糸を巻きつけていく振りに、愛しい人への思いを燃焼させていきます。

ならぬものさらめならんむぬさらみ”の一節で、《ガマク※3》を入れて重心を交互におきながら繰り返しおこなう作業に恋情を掛け合わせた表現方法は観る者の心をとらえます。

 

角切りすみきり※1》

踊り手が舞台を斜めに、下手奥したておくから上手手前うわててまえへ向かって対角線上に歩み出ること。

 

《思い入れ※2》

心に深く思いをそそぎこむ所作。

 

《ガマク※3》

腰骨の上のくびれた脇腹に呼吸を入れ腰と上体をしっかりと固定する身体技法。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

かせと糸巻き

演目で使われるかせとは、 つむいだ糸を巻き取るH型の枠のことを指します。

糸巻きは、紡いだ糸を枠に沿って環状かんじょうに巻き、中心軸を空洞くうどうにしてたば苧環おだまきにする道具を指します。

苧環おだまきの名前の由来である苧麻ちょま(別名:からむし)の植物繊維は、丈夫で光沢に富むことから糸の材料として使われてきました。

 

編集後記

 

言葉あしび

一本一本の糸を丁寧に愛情を込めて織った着物や手ぬぐいには、魂が宿り、家族の健康や安全を祈ります。

沖縄とかけて、糸編の漢字とときます。

- 沖縄と糸の絆は、ふしぎなご縁で結ばれている -

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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  • この記事を書いた人

マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

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