古典舞踊

「作田(作田節)」 - 古典舞踊/女踊り

作田節:歌詞

 

誰がすもてなちやがたがすもてなちゃが 手に馴れし扇子やてぃになりしおじや

暑さ涼だましゆるあつぃさすだましゅる 頼りなとすたゆりなとぅす

 

どなたが作ったのでしょう、手に馴れ親しんでいる扇は。

どのような暑さも涼しくさせてくれる頼りになるものです。

 

早作田節:歌詞

 

夏の日も秋のなつぃぬひんあちぬ 情通わしゆるなさきかゆわしゆる

手に馴れし扇子のてぃになりしおじぬ 風の涼だしやかじぬしだしゃ

 

夏の暑い日も秋の風情を通わせて、

手に馴れ親しんでいる扇の風の涼しいことよ。

 

演目の構成

1838年におこなわれた戌の御冠船うかんしん(※1)重陽ちょうようえんの記録では、「作田節つぃくてんぶし」の楽曲構成は現在のものと大きく異なっており「瓦屋節からやーぶし」、「作田節つぃくてんぶし」、「百名節ひゃくなぶし」の三曲構成で演じられていました。

 

戌の御冠船うかんしん(※1)

1838年の戌年いぬどしにおこなわれた尚育王しょういくおう(在位1835-1847年)冊封式典さっぽうしきてん

 

琉球古典舞踊 女踊り「作田節(作田)」のイラスト

琉球古典舞踊 女踊り「作田節(作田)」

 

演目:解説

 

あらまし

作田つぃくてん作田節つぃくてんぶし)」は手に持つ小道具から団扇踊りと呼ばれており、暑い夏の日を涼むために何気なく馴れ親しんでいる団扇に感謝の念をあらわしながら風流に踊ります。

紅型衣装を着流し、もしくは前つぶりめーちぶい(※1)にし、唐団扇とううちわを持って演じます。

 

前つぶりめーちぶい(※1)

紅型衣装のすそを床に触れない程度に紫長巾むらさきながさーじで前にしばる着付け方法です。

 

演目の呼び名

作田つぃくてん作田節つぃくてんぶし)」は団扇踊り、「伊野波節ぬふぁぶし」は女笠踊り、「瓦屋節からやーぶし」は月見踊り、「本嘉手久むとぅかでいく」は花見踊り(笠踊り)という別称で呼ばれています。

 

みどころ

演目は「作田節つぃくてんぶし」と「早作田節はいつぃくてんぶし」の二曲で構成されます。

前段「作田節つぃくてんぶし」の前奏にあわせて舞台下手奥しもておくから上手奥かみておくへ向かって直線を歩み、”誰がすもてなちやがたがすもてなちゃが”の歌い出しより団扇うちわを斜め手前に添えて舞台中央へ一歩ずつ進み、続く”手に馴れし扇子やてぃになりしおじや”の一節より感謝の気持ちをあらわしながら風流に団扇うちわあおいでしとやかに踊ります。

後段「早作田節はいつぃくてんぶし」では軽やかなテンポに合わせて団扇うちわをあつかい、涼しさを連想させながら心地よさをあらわし、続く”手に馴れし扇子のてぃになりしおじぬ”の一節では手の振りと体のひねりをもって夏の風情を優雅に表現していきます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

演目名の由来

作田つぃくてん作田節つぃくてんぶし)」の由来は、もともとの原歌が稲の豊作を祝う内容でうたわれていることにちなんでいます。

 

作田節つぃくてんぶし(原歌)

 

穂花咲き出ればふばなさちづぃりば ちりひぢもつかぬちりひびぢんつぃかん

白ちゃねやなびきしらちゃにやなびち あぶしまくらあぶしまくら

 

稲穂が咲き出でると、塵も泥も付かず、

白い実が垂れてなびき、畦を枕にする程である。

 

早作田節はいつぃくてんぶし(原歌)

 

銀臼なかへなんじゃうしなかい 黄金軸立ててくがにじくたてぃてぃ

ためし摺り増しゆるためししりましゅる 雪の真米ゆちぬまぐみ

 

銀の臼に黄金の軸を立てて、

試しにもみってみると、たくさん雪のような白い米がとれました。

 

替え歌

旋律が借用しゃくようされ、原歌と替え歌の関係が派生したのは最古の歌謡が集録しゅうろくされている「おもろ」の時代からであり、今日に至るまで一つの伝統形式として成り立っています。

『おもろさうし』 は12世紀から17世紀にかけて島々でうたわれていた歌謡を採録さいろくし、1531年から1623年にかけて編纂へんさんされた最古の歌謡集です。

「おもろ」の語源は 「思いうむい」 を意味します。

 

古典音楽

古典音楽のカテゴリーでは、「作田節つぃくてんぶし」、「早作田節はいつぃくてんぶし」の曲目について解説しています。

 

稲の穂花
「作田節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   穂花咲き出ればふばなさちづぃりば ちりひぢもつかぬちりふぃぢんつぃかん 白ちやねやなびきしらちゃにやなびち あぶしま ...

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花が咲いた木の枝にとまるウグイス
「早作田節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   春や花盛りはるやはなざかゐ 深山鶯のみやまうぐいすぃぬ 匂しのでほけるにをぃしぬでぃふきる 声のしほらしやくゐぬしゅ ...

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参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...

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マブイ

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