特牛節:歌詞
常盤なる松の 変わる事無さめ
何時も春来りば 色ど勝る
訳
四季を通して緑に生い茂る松は、永遠に変わることはありません。
いつものように春が訪れれば、さらに緑色が増すばかりです。
特牛
強く大きな雄牛のこと。昔は、将来性のある若者を牛にたとえて呼んでいたようです。
常盤
春夏秋冬、一年を通して緑色の常緑樹のこと。
「若衆特牛節(こてい節)」:解説
あらまし
元服(※1)前の若衆が踊る演目で、笛と太鼓の音色と共に厳粛なかけ声にのって登場します。
一年を通して葉が枯れることのない松の生命力にあやかり、これからの長い人生、未来に向けて幸先を祈る祝儀舞踊です。
元服(※1)
琉球王国時代に行われていた、数え歳15歳を祝う成人の儀式。
特牛節
「特牛節」は、14首の歌詞が存在し、琉球王府の国王の前で演じる際に最もふさわしい一首に振り付けられました。
前奏
三線の歌持ちから略式で入る構成もあります。
みどころ
首里城を思わせるような鮮やかな緋色の衣装に錦の陣羽織をはおって、金銀の扇を手に持ち登場します。
舞台下手奥から上手奥へ向かって直線を歩み、舞台中央に基本立ちするまでの所作に、若衆の初々しさに品格を兼ね備えた精神性をみることができます。
笛と太鼓の響きはその場を払い清め、神聖な趣を演出する効果があり、凛とした空気が瞬時に舞台を包み込みます。
「特牛節(こてい節)」の”常盤なる松の”の歌い出しで、手に持つ金銀の扇を広げ、幸せが末広がりに続くようにと願いを込めて踊ります。
”何時も春来りば”の一節より扇を持ちかえ、若衆のもつ潔白さを表現しながら扇を巧みにあつかい、将来に向けての希望や大成を鮮やかに描いていきます。
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
補足
継承されている若衆踊り
現在まで継承されている琉球古典舞踊の若衆踊りは、「若衆特牛節」をはじめ「若衆麾」、「若衆揚口節」、「四季口節」のわずかほどですが、琉球王朝時代の文献「踊番組(※2)」によると、若衆踊りが十四ほど記録されており、昔は他にも多くの演目が存在していました。
踊番組(※2)
慶応2(1866)年におこなわれた寅年御冠船の演目を記録した文献。
編集後記
節目
人は人生の途中、いくつもの節目にぶつかります。
松は節から新しい芽が生まれ、年輪を重ねるごとに一段ずつ成長するように、人も実社会の経験を積む中で、それを咀嚼し、一段ずつ乗り越えて成長していくのでしょう。
古くから伝承されてきた琉球古典舞踊の教えには、己の性質を練り、正しいはかりごとをするための問いかけが残されています。
-
-
参考文献:一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。 1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...
続きを見る