舞踊

「苧引」 - 古典舞踊/女踊り

2019年12月31日

つなぎ節つぃなじぶし(前段):歌詞

 

あたり苧やうみやいあたいをぅやうみやい 二十読布織やりはてんぬぬをうやい

玉黄金里がたまぐがにさとぅが 御衣よすらねんしゅゆすぃらに

 

屋敷内の畑に植えてある苧麻からとった麻糸で極上の布を織り、

大切な人へ着物をつくって差し上げましょう。

 

あたりあたい

庭にある菜園。

 

 苧 

学術的には植物の苧麻ちょま(別名:からむし)のことを指しますが、沖縄本島では糸芭蕉に対しても同じく「苧引」と呼んでいることから、両方の植物を演目の解釈として示しています。

 

玉黄金里がたまぐがにさとぅが

(玉や黄金のように)大切な愛しい人。

 

清屋節きよらやぶし(後段):歌詞

 

あたり苧の中ごあたいをぅぬなかぐ 真白ひき晒ちましらひちさるち

里が蜻蛉羽さとぅがあけずばに 御衣裳よすらねんしゅゆすぃらに

 

屋敷内の畑に植えた糸芭蕉の芯を真っ白にさらして、

大切な人へとんぼの羽のように薄くて上質な着物をつくって差し上げましょう。

 

苧引うーびち

採取した苧麻ちょま(別名:からむし)や糸芭蕉いとばしょう外側の皮ウヮーハーいでから、不純物を取り除くために木灰(アルカリ成分)をくわえて煮込みます。

厳密にいうと苧引うーびちの工程はここからで、煮込んだ皮を竹ばさみエービに挟んで何度も丁寧に擦ることで不純物を取り除き、上質な繊維を採取する工程範囲を指します。

苧麻ちょま(別名:からむし)糸芭蕉いとばしょうの繊維は丈夫で光沢に富むことから布生地の材料として使われてきました。

 

苧引 - 写真提供:那覇市歴史博物館

苧引(1) - 提供:那覇市歴史博物館

苧引2 - 写真提供:那覇市歴史博物館

苧引(2) - 提供:那覇市歴史博物館

 

苧引の舞踊写真

-琉球古典舞踊 女踊り「苧引」-

 

苧引うーびち」:演目解説

 

あらまし

糸を紡いで布に仕立てるまでの作業を一連の美しい手踊りで表現していきます。

昔は、植えてあるから繊維を剥ぎとり、染めて布を仕立てるまでの全工程を手仕事でおこなっていました。

この手間のかかる一連の作業を主題として、大切な人を想う心を写し重ねて舞踊化したところにこの演目の深いおもむきがあります。

 

みどころ

演目は、「つなぎ節つぃなじぶし」と「清屋節きよらやぶし」の二曲で構成されます。

前段「つなぎ節つぃなじぶし」の歌い出し”あたり苧やうみやいあたいをぅやうみやい”でから糸をつむぐまでの作業を両手とこまやかな指先の動きであらわし、”二十読布織やりはてんぬぬをうやい”の一節では、上から下へ繰り返しおろす手の振りに布織りの作業を写実的に表現します。

続く、”玉黄金里がたまぐがにさとぅが”の一節で愛しい人を思う心情を《抱き手※1》の技法をもってあらわし、一途に作業する姿を描いた美しい手踊りは多くの人に共感を与えます。

後段「清屋節きよらやぶし」の”里が蜻蛉羽さとぅがあけずばに”の一節で薄くて上質な着物を軽やかな振りで表現し、”御衣よすらねんしゅゆすぃらに”の一節では《袖とり※2》をして、深い愛情で包み込むように踊りを納めていきます。

他の古典舞踊(女踊り)と比べると演目時間は短いですが、一連の手踊りが全体を美しく仕上げ、限られた時間の中にも琉球舞踊の魅力が凝縮された演目になります。

 

《抱き手※1》

両手を広げて包み込み、赤子を抱いているような動きをとる技法。

 

《袖とり※2》

袖を両手ですくあいげる技法。

 

女七踊りの一説

本貫花むとぅぬちばな」にかわって「苧引うーびち」は女七踊りの一つという諸説があります。

 

苧引うーびちの復活

戦後、久しく途絶えていた「苧引うーびち」を柳清会の比嘉清子ひがきよこ師が、1967年(昭和42年)に復活上演し、改めて注目されるようになりました。

 

※略歴

比嘉清子ひがきよこ(1915-1993)
沖縄県那覇市泉崎に生まれる。
柳清会家元
県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者
琉球舞踊「柳」、「苧引」を復活させ、後進の育成、指導に励む。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

苧引うーびち」の表現について、他

愛しい人へ上質な着物を織って差し上げたいという歌意は、古典舞踊(女踊り)の「綛掛かしかき」と同じ意味合いですが、二つの演目の表現方法には大きな違いがあります。

綛掛かしかき」は小道具のかせわくを持って、繰り返しおこなう作業に愛する人を想う一途さを表現しているのに対して、「苧引うーびち」は両手のこまやかな手踊りで、手間ひまかけて作り出す一連の作業に愛する人への情愛を写し重ねて表現していきます。

八重山にも「苧引ぶーびき」という同じ名前(発音が違う)の演目があります。

「たらくじ節」、「くしとうばる節」の二曲で構成されており、”霊威高さ姉妹しぃじぃたかさぶなり”の歌い持ちにあるように、女性が大切な人へ旅立ちの祈りをこめて手ぬぐいを贈る内容で描かれています。

また、小浜島では琉球王府に納める布を織る内容として伝承され、アッカイ(杓子しゃくし)とフドーシ(糸を巻く竹管)を手に持ち、肩にたらしたを手に取り演じていきます。

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

好きな食べ物:苔
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