古典音楽

「本散山節」- 古典音楽

工工四

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歌詞

 

近さたるがけてちかさたるがきてぃ 油断どもするなゆだんどぅんすぃるな

梅の葉や花のうんみぬふぁやはなぬ 匂ひや知らぬにをぃやしらん

 

近いことを当てにして油断をするな。

梅の葉は花のにおいを知ることはない。

たるがけてたるがきてぃ

  • あてにして
  • 頼みにして

 

解説

沖縄では例年1月~2月にかけて梅が開花し、豊かな芳香ほうこうがそよ風に漂いますが、梅の花持ちは短く二週間程度で散ってしまいます。

その後、入れ替わるように梅の葉が芽吹めぶきますが、その葉は先程まで咲いていた花の香りを知ることは出来ません。

本散山節むとぅさんやまぶし」は同じように人生におけるご縁もいずれ移り変わるものであることをさとし、今を生きることの大切さをいた教訓歌きょうくんかです。

 

梅の花

梅の花

 

補足

 

節名の由来

本散山節むとぅさんやまぶし」の節名の由来は諸説しょせつあり、久米島くめじまもしくは伊江島いえじまにかつて存在した地名が起源になっているのではないかとわれています。

島尻郡久米島町字島尻しまじりぐんくめじまちょうしまじりには、その由来となる 臼太鼓うすぃでーく(※1)の古謡「島尻散山節しまじりさんやまぶし」の歌碑が建てられています。

また、各地方に伝わる祭祀さいし行事で歌われる古謡に”さんやま”の語句がみられることから、特定の地形や景観を総称して呼んでいた可能性も考えられます。

 

臼太鼓うすぃでーく(※1)

村集落の豊穣や繁栄を祈願して納める奉納舞踊。

婦人たちで円陣をつくり直径30cmほどの小鼓にあわせて歌いながら踊ります。年長者の神人かみんちゅが先頭で音頭をとり、村集落の女性たちが年齢順につづきます。歌唱曲の一つとして本曲が継承されてきました。

 

島尻散山節しまじりさんやまぶし

散山の胡弓小さんやまぬくちょうぐゎ あしび胡弓小あしびくちょうぐゎ

西平の胡弓小にひんらぬくちょうぐゎ 踊りの胡弓小うどぅいぬくちょうぐゎ

胡弓の声聞きもくちょうぬくいちちん いじちかん者やいじちかんむぬや

按司が用もたたぬあじがゆんたたん わ身も持たぬわどんむたん

 

散山の胡弓は、座をにぎやかにする胡弓だ。

西平の胡弓は、踊りを引き立てる胡弓だ。

胡弓の音を聞いても勇み立たない者は、

按司あじの御用にも役立たないし、私のことも満足にできないであろう。

胡弓くーちょう

  • 楽器本体を左右に回転させながらげんを弓でって演奏する琉球楽器。棹と椀型わんがたの胴は黒木やユシギ(古くは椰子やしの実の殻)が用いられ、表面に蛇の皮を張って作られる。近年までげんの数は三本仕様であったが、演奏音域を広げるために改良され、現在では四本仕様で演奏されることが一般化した。

按司あじ

  • 按司あじは国王の親族に位置する特権階級。各地域を領地として与えられ自陣じじんの領地の名をとって家名にするならわしである。

 

島尻散山節の歌碑

島尻散山節の歌碑 - 提供:歌碑を訪ねて西東

 


 

参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

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