古典舞踊

「瓦屋節(なからた)」 - 古典舞踊/女踊り

なからた節:歌詞

 

できやよおしつれてでぃちゃようしつぃりてぃ 眺めやり遊ばながみやいあすぃば

今日や名に立ちゆるきゆやなにたちゅる 十五夜だいものじゅぐやでむぬ

 

さあ、一緒に眺めにいきましょう。

今日は名に立つ(評判の)十五夜ですから。

なからたなからた

  • 仲良田なからた = 八重山列島の西表島に流れる仲良川なからがわ流域一帯の水田

 

瓦屋節:歌詞

 

押す風も今日やうすかじんきゆや 心あてさらめくくるあてぃさらみ

雲晴れて照らすくむはりてぃてぃらす 月の清さつぃちぬちゅらさ

 

そよ吹く風も今日は心あるもののように、

雲はすっかり晴れて照り輝く月の美しいことよ。

 

シヤウンガナイ節:歌詞

 

月も眺めたりつぃちんながみたい できやよ立ち戻らでぃちゃよたちむどぅら

里や我が宿にさとぅやわがやどぅに 待ちゆらだいものまちゅらでむぬ

 

月も眺めましたので、さあ一緒に戻りましょうか。

大切な人が我が家で待っていますから。

さとぅ

  • 女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に対して使うとき「無蔵んぞ」と呼ぶ。

 

琉球古典舞踊 女踊り「瓦屋節」のイラスト

琉球古典舞踊 女踊り「瓦屋節」

 

演目:解説

 

あらまし

瓦屋節からやーぶし」は古くより月や太陽、風土や気候に対する自然への畏敬いけいの念を重んじてきた人々のつつしみ深い心を表現した演目です。

月見を楽しむ様子が描かれていることから別名「月見踊り」、また第一曲目(出羽んじふぁ)の節名から「なからた」とも呼ばれています。

諸屯しゅどぅん」や「天川あまかー」と同様に手踊りのみで表現していく代表的な古典舞踊で戦前の芝居小屋ではとても人気を博したそうです。

 

演目の呼び名

瓦屋節からやーぶし」は月見踊り、「伊野波節ぬふぁぶし」は女笠踊り、「作田つぃくてん作田節つぃくてんぶし」は”団扇踊り、「本嘉手久むとぅかでいく」は花見踊り(笠踊り)という別称で呼ばれています。

 

みどころ

演目は「なからた節なからたぶし」、「瓦屋節からやーぶし」、「シヤウンガナイ節しょんがねーぶし」で構成され、三曲とも月見つきみを主題に描かれた内容となっています。

第一曲目「なからた節なからたぶし」の抒情性じょじょうせい豊かな旋律にあわせて《角切りすみきり※1》で静かに歩み、”できやよ押し連れてでぃちゃようしつぃりてぃ”の歌い出しで《思い入れ※2》をいれたあと、足と上半身の動きを中心に十五夜のゆかしさを表現していきます。

第二曲目「瓦屋節からやーぶし」では”押す風も今日やうすかじんきゆや”の一節で、両手を右から左にまた左から右へ流す一連の振りにそよ風のさわやかさを演出し、”月の清さつぃちぬちゅらさ”の一節で《ガマク※3》を入れ、親指と人差し指を触れあわせ《月見手ちちみでぃ※4》をつくり、夜の月の美しさに喜びをあらわします。

第三曲目「シヤウンガナイ節しょんがねーぶし」は、曲調のテンポにあわせて足づかいを軽やかに移動し、”待ちゆらだいものまちゅらでむぬ”では《指組※5》に女性のやさしい心づかいを施しながら踊りを納めます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

角切りすみきり※1》

踊り手が舞台を斜めに、下手奥しもておくから上手前かみてまえへ向かって対角線上に歩み出ること。

 

《思い入れ※2》

心に深く思いをそそぎこむ所作。

 

《ガマク※3》

腰骨の上のくびれた脇腹に呼吸を入れ、腰と上体をしっかりと固定する身体技法。

※息を吸いながら腰の移動をおこない、息を吐きながらその腰に上体を納める呼吸作用。

 

月見手ちちみでぃ※4》

親指と人差し指の先を触れあわせ、目の形をつくりひたいの斜め前にかざす技法。

 

《指組※5》

(上記演目の写真のように)両手の指を重ね合わせて組む技法。

 

出羽んじふぁ中踊りなかうどぅい入羽いりふぁ

出羽んじふぁは踊り手が登場する出の踊りです。

中踊りなかうどぅいは舞台中央奥で立ち直りをしたあとの本踊りを指し、入羽いりふぁは舞台下手奥しもておくに戻っていく納めの踊りのことを指します。

琉球古典舞踊の基本構成は、この三部のつながりで構成されています。

 

舞台図

舞台図

 

補足

 

十五夜じゅうぐやー

最も美しい月が見える旧暦八月十五日の夜は、沖縄各地で一年の豊作に感謝して大綱引きや臼太鼓ウスデークなど様々な行事がおこなわれ、首里城では琉球王朝時代より続く「中秋ちゅうしゅううたげ」が盛大に催されます。

また、一般家庭では塩をふってでた小豆を白い餅にまぶした「吹上餅ふちゃぎ」をつくり、お仏壇や床の間、火の神ひぬかん(家を守るかまどの神様)にお供えする習わしがあります。

 

十五夜の首里城

十五夜の首里城

ふちゃぎ

ふちゃぎ

 

古典音楽

古典音楽のカテゴリーでは、「なからた節なからたぶし」、「瓦屋節からやーぶし」、「シヤウンガナイ節しょんがねーぶし」の曲目について解説しています。

 

実った稲
「なからた節」- 古典音楽

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南窯(那覇市壺屋)2
「瓦屋節」- 古典音楽

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面影イメージ(シルエット)
「シヤウンガナイ節」- 古典音楽

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参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...

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マブイ

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