仲良田節(第一曲目):歌詞
できやよ押し連れて 眺めやり遊ば
今日や名に立ちゆる 十五夜だいもの
訳
さあ、一緒に眺めにいきましょう。
今日は名に立つ(評判の)、十五夜ですから。
瓦屋節(第二曲目):歌詞
押す風も今日や 心あてさらめ
雲晴れて照らす 月の清さ
訳
そよ吹く風も今日は、心あるかのように、
雲はすっかり晴れて、照り輝く月の美しいことよ。
しゃうんがない節(第三曲目):歌詞
月も眺めたり できやよ立ち戻ら
里や我が宿に 待ちゆらだいもの
訳
月も眺めましたし、さあ一緒に戻りましょうか。
愛しい人が我が家で待っていますから。
里
しゃうんがない節の一節、”里や我が宿に”の「里」は、女性が思いをよせる愛しい男性のことを示す言葉です。
対して、男性が思いをよせる愛しい女性を言いあらわす場合は、「無蔵」と呼びます。
「瓦屋節」:演目解説
あらまし
演目は月見を楽しむ様子が描かれていることから昔は、「月見踊り」と呼ばれていました。
月や太陽、風土や気候に対する自然への畏敬の念を重んじてきた人々の美しい心を情緒豊かに表現していきます。
「諸屯」や「天川」と同様に、手踊りのみで表現していく代表的な古典舞踊で、戦前の芝居小屋ではとても人気を博した舞踊演目の一つでした。
みどころ
演目は、「仲良田節」、「瓦屋節」、「しやうんがない節」で構成され、三曲とも月見を主題に描かれた内容となっています。
第一曲目(出羽)「仲良田節」は、抒情性豊かな旋律にあわせて、《角切り※1》で静かに歩み、”できやよ押し連れて”の歌い出しで《思い入れ※2》をいれたあと、足と上半身の動きを中心として手の振りはみせずに十五夜のゆかしさを表現していきます。
第二曲目(中踊り)「瓦屋節」では、”押す風も今日や”の一節で、両手を右から左にまた左から右へ流す一連の振りに、そよ風のさわやかさを演出し、”月の清さ”の一節で《ガマク※3》を入れ、親指と人差し指を触れあわせ《月見手※4》をつくり、夜の月の美しさに喜びをあらわします。
第三曲目(入羽)「しやうんがない節」は、曲調のテンポにあわせて足づかいを軽やかに移動し、”待ちゆらだいもの”では、《指組※5》に女性のやさしい心づかいを施しながら踊りを納めます。
《角切り※1》
踊り手が舞台を斜めに、下手奥から上手手前へ向かって対角線上に歩み出ること。
《思い入れ※2》
心に深く思いをそそぎこむ所作。
《ガマク※3》
腰骨の上のくびれた脇腹を少し屈折させて呼吸を入れ、腰と上体をしっかりと固定する身体技法。
《月見手※4》
親指と人差し指の先を触れあわせ、目の形をつくり額の斜め前にかざす技法。
《指組※5》
(上記演目の写真のように)両手の指を重ね合わせて組む技法。
出羽/中踊り/入羽
出羽は踊り手が登場する出の踊り。中踊りは舞台中央奥で立ち直りをしたあとの本踊りを指し、入羽は舞台下手奥に戻っていく納めの踊りのことを指します。
琉球古典舞踊の基本構成は、この三部のつながりで成り立っています。
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
補足
十五夜
沖縄の十五夜は旧暦の八月十五日にあたり、各地で大綱引きや臼太鼓、他さまざまな豊作祈願の行事がおこなわれます。
また毎年、首里城では琉球王朝時代より続く、「中秋の宴」が盛大に催され、琉球古典舞踊、組踊が上演されます。
一般家庭では、塩をふって茹でた小豆を白い餅にまぶした「吹上餅」をつくり、お仏壇や床の間、火の神(家を守るかまどの神様)にお供えする習わしがあります。
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参考文献:一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。 1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...
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