工工四
歌詞
誠一つの 浮世さめ
のよでい言葉の あはぬおきゆが
訳
誠実であることが最も大切な世の中である。
(誠実な心持ちで接すれば)どうして言葉の相違があろうものか。
誠
- 誠実
- 誠意
浮世
- 日常のありさま
- 世の中
のよで
- どうして
あはぬ
- 合わない
- 通じない
- 相違
- 不一致
解説
「仲風節」(ニ揚調)は、人生を歩んでいくには誠実な心持ちが大切であり、常にその態度で接していれば他者と折り合いがつかぬことはないであろうと、人生における教訓的な要素を詠み込んだ歌曲です。
一般的に琉歌は上句〔八・八〕、下句〔八・六〕の計三十音の定律で構成されますが、本曲の上句は〔五・五〕の和歌の音数律で詠まれています。
一説によると、こうして和歌と琉歌の二つの要素を中半分ずつ取り入れたことから”仲風”と呼ばれるようになったと云われています。
「仲風節」(ニ揚調)は、中弦を一音上げる二揚調(調弦法)で演奏され、この情感ある曲想を「情節」と称し、琉球古典音楽では「干瀬節」、「子持節」、「散山節」、「述懐節」と共に独唱曲(一人節)として愛唱されてきました。
補足
逸話
教育、芸能文化の振興に力を注いだ尚敬王の時代(18世紀頃)、「仲風節」は種々の演奏表現を用いて創作されてきました。
首里士族で和文学者の平敷屋朝敏をはじめ、「仲風節」の多くは恋歌を中心に詠まれていますが、本歌には教訓的な要素を含んだ本歌詞が採用されました。
一説によると、当時、国政の指揮を執っていた蔡温の強権的な政治体制を批判したことにより、反逆の罪に処された平敷屋朝敏の作品を差し控えたことが背景にあると云われています。
略歴
■平敷屋朝敏(1700-1734)
沖縄県那覇市首里金城村に生まれる。(首里士族の家系)
和文学者、和文物語作者。
組踊の「手水の縁」をはじめ、「若草物語」、「苔の下」、「萬歳」、「貧家記」、他に和歌や琉歌を残す。
略歴
■尚敬王(1700-1752)
第二尚氏王統の第13代国王。
教育と文化振興に力を入れ、琉球王国を文化大国へ導いた名君。
現代に伝承される芸能文化の多くがこの時代に生み出される。
1719年には台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された組踊(国の重要無形文化財、世界のユネスコ無形文化遺産)が誕生。
略歴
■蔡温(1682-1762)
沖縄県那覇市久米村に生まれる。
中国から渡ってきた種族の末裔。(久米三十六姓)
若くして即位した尚敬王の国師職(教育係)を務める。
1728年には国政の指揮を執る三司官に就任し、儒教の思想を取り入れながら行政改革をおこなう。
組踊
三千首の琉歌を収めた『標音・評釈琉歌全集/武蔵野書院版』には古典音楽のなかで最も多い百二十三首の作品が収録されており、情に満ちた節々は多くの人の心を惹きつけ、演奏会などでは古典音楽の華として愛唱されてきました。
組踊(※1)の演目「手水の縁」では、愛する人のもとへ人目につかぬよう忍んで行く場面で「仲風節(ニ揚調)」が演奏されます。
組踊(※1)
琉球王国時代の1719年に踊奉行(式典の際に舞台を指揮、指導する役職)の任命を受けた玉城朝薫により創始された歌舞劇です。
台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。
略歴
■玉城朝薫(1684年-1734年)
首里儀保村に生まれる。
琉球王国の官僚で冊封式典の踊奉行を務める。国劇である組踊の創始者であり、多くの芸術作品を生み出す。
「二童敵討」、「執心鐘入」、「銘苅子」、「孝行の巻」、「女物狂」を朝薫五番と称す。
音の調子
「仲風節」は本調子、ニ揚調など、音の調子を種々に編曲し、それぞれが独立した歌曲として演奏されています。
「仲風節」(本調子)- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 語りたやかたゐたや 語りたやかたゐたや 月の山の端につぃちぬやまぬふぁに かかるまでもかかるまでぃん 訳 語りま ...
続きを見る
「仲風節」(二揚調・下出し)- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 結ばらぬむすぃばらん 片糸のかたいとぅぬ 逢はぬ恨みとてあわんうらみとぅてぃ つもる月日つぃむるつぃちふぃ 訳 ...
続きを見る
「仲風節」(本調子・下出し)- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 結ばらぬむすぃばらん 片糸のかたいとぅぬ あはぬうらめとてあわんうらみとぅてぃ つもる月日つぃむるつぃちふぃ 訳 ...
続きを見る
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る