工工四
歌詞
今日の誇らしやや 何にぎやな譬てる
莟で居る花の 露行逢た如
訳
今日の慶びは何にたとえることができましょう。
(まるで)つぼんでいる花が朝露をうけて(花開く心のようです)。
ほこらしや
- 慶び = おめでたい、縁起が良い事柄
なをにぎやなたてる
- 何に譬えよう
露きやたごと
- 露に行逢うよう、露に出逢う
- 露をうける
解説
「かぎやで風節」は琉球王国の泰平を寿ぎ、お祝いの座開きに演奏されていた代表的な古典音楽です。
国王の御前で演奏されたことから「御前風」という特称で呼ばれています。
朝露を受けてパッと花開くつぼみの姿にこの上ないよろこびを表現して詠まれています。
現在では結婚式や新築祝い、とぅしびーなどのお祝いの席で演奏されることが多くなりました。
最古の琉歌集である『琉歌百控』(※1)には「かぎやで風節」の原歌となる「嘉謝伝風節」が収録されており、国頭郡国頭村奥間には本曲の歌碑が建てられています。
内容は伊是名島を追われたのちの尚円王が嘉謝 = 鍛冶屋の青年に助けられ、その後、王位に就いた際に恩返しを申し出て、この鍛冶屋を国頭の按司(※2)へ出世させた物語となっています。
『琉歌百控』(※1)
上編「乾柔節流」、中編「独節流」、下編「覧節流」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂された最も古い琉歌集です。
按司(※2)
按司は国王の親族に位置する特権階級で各地域を領地として与えられていました。
嘉謝伝風節
あた嘉報の附す 夢やちやうん見ぬ
嘉謝手報のつくへ 混と附さ
訳
思いがけない大きな果報が得られようとは夢にも見ないことであった。
鍛冶屋でいろいろ物を作ってきたが、そのおかげで思いがけぬ果報が身にぴったりとついた(良い事をすると思いもよらぬ果報があるものだ)。
あた
- 思いがけない
- 想像以上の
- 大きな - 参照:『標音・評釈琉歌全集/武蔵野書院版』
果報
- 幸せなこと
- 幸運
補足
「かぎやで風節」は新しい年を迎えるときに歌われる歌詞があります。
新年用の歌詞
新玉の年に 炭と昆布飾てぃ
心から姿 若くなゆさ
訳
新しい年を迎えて、炭と昆布を飾って一年を祈ると、
心も身体も、若返ったような気持ちになります。
沖縄の正月飾り
昆布で炭を巻く習わしがあります。炭は朽ちないので「健康長寿」、昆布は「よろこぶ」を意味しています。
御前風五節
「かぎやで風節」は宮廷の祝賀行事の座開きに琉球国王の御前で演奏され代表的な歌曲ですが、同じ席で演奏された「恩納節」、「中城はんた前節」、「特牛節(こてい節)」、「長伊平屋節」を含めた五つの楽曲を総称して「御前風五節」と呼びます。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは、「かぎやで風節」が舞踊曲として演奏される「かぎやで風」の演目について解説しています。
「かぎやで風」 - 古典舞踊/老人踊り
かぎやで風節:歌詞 今日の誇らしややきゆぬふくらしゃや 何にぎやな譬てるなうにじゃなたてぃる 莟で居る花のつぃぶでぃをるはなぬ 露行逢た如つぃゆちゃたぐとぅ 訳 今日の喜び ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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