工工四
歌詞
常盤なる松の 変わる事無さめ
何時も春来りば 色ど勝る
訳
四季を通して緑に生い茂る松は、永遠に変わることはありません。
いつものように春が訪れれば、さらに緑色が増すばかりです。
特牛
- 強く大きな雄牛のこと。将来性のある若者を牛にたとえている。
常盤
- 春夏秋冬、一年を通して緑色の常緑樹のこと。
解説
「特牛節(こてい節)」は一年を通して枯れることがない「松」の生命力にあやかり人生の幸先を祝して詠まれた歌曲です。
沖縄の県木に指定されている「琉球松」は青々とした葉とその美しい枝ぶりが特徴的な常緑樹で、正月飾りをはじめお祝いの縁起物に用いられることが多く、古くより人々の生活に寄り添ってきました。
「特牛節(こてい節)」は沖縄本島の本部港から北西へ9kmの場所にある伊江島が発祥の地で本曲の原歌となる歌碑が建てられています。(※下記参照)
節名は上句 "おほにしの特牛や"~の「特牛」に由来しています。
原歌
おほにしの特牛や なざちやらど好きゆる
わすた若者や 花ど好きゆる
訳
おほにしの特牛はなざらちゃら(葉)が好きであるけれども、
われわれ若者は花が好きだ。
おほにし(大西)
現在の読谷村の古称。
古い地図で確認すると残波岬周辺は大西峠と記されています。
補足
本歌の作者
「特牛節(こてい節)」は北谷王子朝騎が創作した琉歌で、尚敬王(在位:1713年 - 1751年)の時代に18年間に渡り摂政(※1)を務めました。
摂政(※1)
国王となる者が幼少であったり、病気や事故などで政治を執り行うことが実質不可能な場合に代わって政治の指揮を執り行う職。
略歴
■尚敬王(1700-1751)
第二尚氏王統の第13代国王。
教育と文化振興に力を入れ、琉球王国を文化大国へ導いた名君。
現代に伝承される芸能文化の多くがこの時代に生み出される。
1719年には台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された組踊(国の重要無形文化財、世界のユネスコ無形文化遺産)が誕生。
御前風五節
「特牛節(こてい節)」は荘重で品格のある曲想で、宮廷の祝賀行事の座開きに琉球国王の御前で演奏されていました。
「かぎやで風節」、「恩納節」、「中城はんた前節」、「長伊平屋節」の五曲を総称して”御前風五節”と称します。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「特牛節(こてい節)」が舞踊曲として演奏される「若衆特牛節」、「女特牛節」について解説しています。
替え歌
旋律が借用され、原歌と替え歌の関係が派生したのは最古の歌謡が集録されている「おもろ」の時代からであり、今日に至るまで一つの伝統形式として成り立っています。
『おもろさうし』 は12世紀から17世紀にかけて島々で詠われていた歌謡を採録し、1531年から1623年にかけて編纂された最古の歌謡集です。
「おもろ」の語源は 「思い」 を意味します。
「若衆特牛節」 - 古典舞踊/若衆踊り
特牛節:歌詞 常盤なる松のとぅちわなるまつぃぬ 変わる事無さめかわるくとぅねさみ 何時も春来りばいつぃんはるくりば 色ど勝るいるどぅまさる 訳 四季を通して緑に生い茂る松は ...
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「女特牛節」 - 古典舞踊/女踊り
特牛節(こてい節):歌詞 御慈悲ある故どぐじふぃあるゆいどぅ 御万人のまぎりうまんちゅぬまじり 上下も揃てかみしむんするてぃ 仰ぎ拝むあうじをぅがむ 訳 御慈悲ごじひある国 ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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