「麾（ゼイ）」 - 古典舞踊／二才踊り

豊かなる世の兆きざしがあらわれて、

雨露の恵みも時を違たがわず。

今日はお会いしてたくさん遊ぶことができた（楽しかったが）、

明日、面影おもかげが立つと思うと。（心が切なくなります）

「麾ぜい（ゼイ）」は勇壮な手踊りと力強い足運び、そして手に持つ麾ぜいを巧たくみにあつかいながら平安な世を祈願して演じられる祝儀舞踊しゅうぎぶようです。

麾ぜいは合戦時かっせんじに武将が指揮を執とるために使われた道具を指し、災厄を払う効果があるとされ、儀礼の場を清めるものとして扱われてきました。この戦の象徴となる道具の意味を逆説的ぎゃくせつてきに用いて、争いのない平安な世を願い託たくしたところにこの演目の深い趣おもむきがあります。

演目は一本麾ぜいと二本麾ぜいで演じられる形式がみられ、天保3（1832）年の江戸上り（※1）を記録した『琉球人舞楽御巻物』には、一本麾ぜい（房は白黒二色）の姿をした踊りが描かれています。

器楽曲きがくきょく「渡りざうわたりぞう」の演奏より《角切りすみきり※2》で登場し、舞台中央で基本立ちになると、地謡じうてーの掛け声と共に器楽曲きがくきょく「 瀧落したちをぅとぅし」に移り、空手の型を基礎とした一連の勇壮な手踊りと力強い足運びに抑揚よくようをつけて踊っていきます。

器楽曲きがくきょくの演奏終了と共に舞台中央で後ろ向きに座って、腰に差している麾ぜいを手に持ちます。

「揚作田節あぎつぃくてんぶし」では全体を通して手に持つ麾ぜいを四方に打ち振い、平安な世を寿ことほぎながら踊ります。

「浮島節うきしまぶし」は短い演奏時間のなかに麾ぜいの一連の振りを凝縮させ、一場いちじょうのよろこびをテンポ良く表現しながら踊りを納めていきます。