工工四
歌詞
今年毛作りや あん清らさよかて
倉に積みあまち 真積しやべら
訳
今年の作物はみごとな出来栄えで、
倉に積み余るので外に真積みしましょう。
毛作り
- 作物
清らさ
- 清らか
- 美しい
真積
収穫の季節、臨時的につくる稲の貯蔵法。土台石を基礎に部材を架けたあと、束にしておいた稲の穂先を内にし円形にならべて段々と積み上げ、最後に上部を藁で葺く積み方のことを指します。日本各地に分布してみられる貯蔵法ですが、地域によって名前が異なります。
※沖縄の「稲真積」の写真資料が見つからないため、同じような積み方をとる他県の稲積を参考画像として掲載しています。
解説
「稲まづん節」は今年実った稲の豊作を祝し、五穀豊穣の祈りを詠み込んだ歌曲です。
収穫の時期、倉に納まりきらずに余った稲は庭に組んだ土台に積み上げて臨時的な貯蔵庫として備えていました。
島の各地でみられた風情あるこの景色を題材に、人々の豊作を祈る切なる想いが本曲に込められています。
最古の三線楽譜である『屋嘉比工工四』(※1)には「昔御前風節」の節名で「稲まづん節」が収められており、尚清王(在位:1527年~1555年)の時代までは「かぎやで風節」の代わりに国王の御前で演奏された一番歌であったと云われています。
また、「稲まづん節」は「作田節」、「早作田節」の三曲を一組(一鎖)にして演奏されることがあります。
略歴
■尚清王(1497-1555)
第二尚氏王統の第4代国王。
1537年に奄美大島で起こった与湾大親の反乱を鎮圧。
また、倭寇(海賊)に対する軍事的圧力で功績をあげる。
在位中の1531年に『おもろさうし』第一巻が編纂される。
屋嘉比工工四(※1)
琉球音楽家の屋嘉比朝寄(1716-1775)によって編み出された記譜法により創案された現存する最も古い三線楽譜です。(117曲編纂)
補足
楽曲の変遷
一説によると、「稲まづん節」の曲調を早くして作られた「早稲まづん節」が辻界隈の芸妓の間で演奏されるようになり、この曲が後の「本花風節」の原形になったと云われています。《参考:『嗣周・歌まくら』那覇出版社》
また、琉球王府の楽師を務めた知念績高が芸妓の弾く「本花風節」のくずれに手を加えて「花風節」が創作されたと云われています。《参考:『琉球の音楽芸能史 』民俗芸能全集刊行会》
略歴
■知念績高(1761-1828)
沖縄県那覇市首里桃原町に生まれる。
湛水流の奥平朝昌に師事し、その後、屋嘉比朝寄の「当流」を豊原朝典より学ぶ。
のちに屋嘉比工工四(117曲)に46曲を追加し、芭蕉紙工工四を完成させる。
弟子には、安冨祖流を創設した安冨祖正元や野村流を創設した野村安趙がいる。
二回にわたり琉球王府の楽師を務めた。
中昔節
「稲まづん節」は古典音楽の中昔節(※1)の分類に属します。
中昔節(※1)
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「稲まづん節」が舞踊曲として演奏される「稲まづん」について解説しています。
「稲まづん」 - 古典舞踊/女踊り
稲まづん節:歌詞 今年毛作りやくとぅしむづくいや あん美らさよかてあんちゅらさゆかて 倉に積みあまちくらにつぃんあまち 真積みしやべらまづぃんしゃびら 訳 今年の作物はみご ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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