舞踊

「稲まづん」 - 古典舞踊/女踊り

2020年1月25日

稲まづん節いにぃまづぃんぶし(前段):歌詞

 

今年毛作りやくとぅしむづくいや あん美らさゆかてあんちゅらさゆかて

倉に積み余らくらにつぃんあまら 真積みしやべらまづぃんしゃびら

 

今年の作物はみごとな出来栄えで、

倉に積み余るので外に真積みしましょう。

 

稲真積みいにぃまづぃん

収穫の季節、臨時的につくる稲の貯蔵法。

土台石を基礎に部材をけたあと、束にしておいた稲の穂先を内にし円形にならべて段々と積み上げ、最後に上部をわらく積み方のことを指します。

日本各地に分布してみられる貯蔵法ですが、地域によって名前が異なります。

 

稲積(にほ) - 画像提供:PIXTA

※沖縄の「稲真積みいにぃまづぃん」に関する写真資料が見つからないため、同じ稲の積み方をとっている他県の稲積(にほ)を参考画像として掲載しています。

 

早作田節はいつぃくてんぶし(後段):歌詞

 

銀臼なかへなんじゃうしなかい 黄金軸立ててくがにじくたてぃてぃ

試し摺り増するたみしすりましゅる 雪の真米ゆちぬまぐみ

 

銀の臼に黄金の軸を立てて、

試しにってみると、たくさん雪のような白い米がとれました。

 

稲まづんの舞踊写真

- 琉球古典舞踊  女踊り「稲まづん」-

 

「稲まづん」:演目解説

 

あらまし

現代の農業技術と比べると、昔は農作物を育てることが容易ではなかったため、五穀ごこく(※1)のなかでも特に稲作いなさくにおいては国をあげて生育せいいくを見守ってきた歴史があります。

そのような時代背景から、稲の豊作はすべての人々の願いであり、かえがたい喜びでもありました。

演目は稲穂いなほを手に持って、今年の五穀豊穣ごこくほうじょうを祝い、そして将来に向けた世果報ゆがふ(※2)をお祈りする祝儀舞踊しゅうぎぶようです。

 

五穀ごこく(※1)

地域や時代によって異なりますが、5種類の穀物(主にこめ(稲)、むぎあわまめきび、もしくはひえ)を総称します。

また、沖縄ではいも五穀ごこくにあげる地域も存在するようです。

 

世果報ゆがふ(※2)

古来からの信仰である弥勒世果報みるくゆがふの言い伝えで、弥勒みるく様がもたらす穏やかで平和な世の中、幸福で実り豊かな世の中などをあらわします。

 

みどころ

演目は、「稲まづん節いにぃまづぃんぶし」と「早作田節はいつぃくてんぶし」の二曲で構成されます。

前段「稲まづん節いにぃまづぃんぶし」の前奏より舞台下手奥しもておくから上手奥かみておくへ歩み、舞台正面で基本立ちになります。

今年もづくりやくとぅしむづくいや”の歌い出しで、手に持つ稲に豊作への感謝の気持ちをあらわし、”倉に積み余らくらにつぃんあまら”の一節では、稲穂いなほに手を添える所作に実り豊かな収穫の様子を映し重ねていきます。

後段「早作田節はいつぃくてんぶし」の軽やかなテンポにのせて万民のよろこびを表現し、手に持つ稲穂いなほの振りにあわせながらもう片方の手の振りで踊りの一体感をあらわし、手の《こねり※3》と身体の《なより※4》をともないながら展開していきます。

雪の真米ゆちぬまぐみ”の一節では、稲穂いなほをそっと支えるように踊り、おおらかに豊作のよろこびを描きながら踊りを納めていきます。

 

《こねり※3》

手をやわらかくまわす動き。

 

《なより※4》

身体全体をしなやかにやわらかく動かす身体技法。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

稲まづんいにぃまづぃん」の歴史

稲まづんいにぃまづぃん」は稲穂いなほの小道具を持って踊りますが、昔は団扇うちわを持って踊っていたこともあるため別名「団扇踊りうちわうどぅい」とも呼ばれていたようです。

稲まづん節いにぃまづぃんぶし」は、屋嘉比工工四やかびくんくんしー(※4)に「昔御前風節んかしぐじんふうぶし」とあり、御冠船うかんしんの楽師を務めた知念績高ちねんせっこうにより、御前風ぐじんふうが組み替えられるまでは国王の御前で演奏されていた楽曲であったようです。

 

屋嘉比工工四やかびくんくんしー(※4)

琉球音楽家の屋嘉比朝寄やかびちょうき(1716-1775)によって編み出された記譜法きふほうにより創案された、現存する最も古い三線楽譜です。(117曲編纂へんさん

 

※略歴

知念績高ちねんせっこう(1761-1828)
沖縄県那覇市首里桃原町に生まれる。
湛水流たんすいりゅう奥平朝昌おくだいらちょうしょうに師事し、その後、屋嘉比朝寄やかびちょうきの「当流」を豊原朝典とよはらちょうてんより学ぶ。
のちに屋嘉比工工四やかびくんくんしー(117曲)に46曲を追加し、芭蕉紙工工四ばしょうしくんくんしーを完成させる。
弟子には、安冨祖流あふそりゅうを創設した安冨祖正元あふそせいげんや野村流を創設した野村安趙のむらあんちょうがいる。

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

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