渡りざう、 瀧落し:器楽曲
歌唱を伴わない楽器のみで演奏される器楽曲。(インストゥルメンタル)
揚作田節:歌詞
豊かなる御代の しるしあらはれて
雨露の恵み 時も違はぬ
訳
豊かなる世の兆しがあらわれて、
雨露の恵みも時を違わずに(与えてくださることは喜ばしいことです)。
浮島節:歌詞
今日や御行逢拝で いろいろの遊び
明日や面影の 立ちゆと思みば
訳
今日はお逢いして色々な遊びをすることができ(楽しかった)。
明日、(今日の)面影が立つと思うと(心惜しくなります)。
演目の構成
流派によっては、「揚作田節」の後にさらに「浮島節」を加えて踊りを納める構成があります。
「麾」:演目解説
あらまし
勇壮な手踊りと力強い足運び、そして手に持つ麾を巧みにあつかいながら平安な世を祈願して演じられる祝儀舞踊です。
麾とは、合戦時に武将が指揮をする際に使用していた道具を指します。
演目は一本麾と二本麾で演じられる形式がみられ、天保3(1832)年の江戸上り(※1)を記録した『琉球人舞楽御巻物』(参考文献:一覧)には、一本麾の姿をした様子が描かれています。
江戸上り(※1)
徳川将軍の襲封時のお祝いに派遣される慶賀使と、琉球国王の即位時のお祝いに派遣される恩謝使が江戸幕府へ赴くことを指します。
寛永11(1634)より計18回おこなわれ、琉球王府の使節団は各100名前後で構成されていました。
みどころ
演目は、器楽曲の「渡りざう」、「 瀧落し」と「揚作田節」の三曲、または「浮島節」を加えた四曲構成で演じられます。
流派によって演目の所作や構成に違いがみられますが、本文では一本麾の形式に沿って「浮島節」を加えた四曲構成の大まかな流れを記していきます。
器楽曲「渡りざう」の演奏より《角切り※2》で登場し、舞台中央で基本立ちになると、地謡の掛け声と共に器楽曲「 瀧落し」に移り、空手の型を基礎とした一連の勇壮な手踊りと力強い足運びに抑揚をつけて踊っていきます。
器楽曲の演奏終了と共に舞台中央で後ろ向きに座って、腰に差している麾を手に持ち、次の曲目につないでいきます。
「揚作田節」では、全体を通して手に持つ麾を四方に打ち振って、平安な世を寿ぎながら表現していきます。
「浮島節」は、短い演奏時間のなかに麾の一連の振りを凝縮させ、一場のよろこびをテンポ良くあらわしながら踊りを納めていきます。
《角切り※2》
踊り手が舞台を斜めに、下手奥から上手手前へ向かって対角線上に歩み出ること。
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
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「若衆麾(ぜい)」 - 古典舞踊/若衆踊り
渡りざうわたりぞう、 瀧落したちをぅとぅし:器楽曲 歌唱を伴わない楽器のみで演奏される器楽曲きがくきょく。(インストゥルメンタル) 辺野喜節びぬちぶし:歌詞 ...
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補足
「麾」の歴史
「麾」の歴史を紐解いていくと、「踊番組(※3)」には演目名、舞台構成に関連性のある「麾」の演目が5種類記録されており、下記1~4番までは二本麾で、5番のみ一本麾の形式がとられています。
- 両麾 - 「辺野喜節」、「浮島節」
- 両麾 - 「東里節」
- 両麾 - 「揚作田節」
- 両麾 - 「ひやんかん節」
- 麾 - 「江佐節」
「踊番組(※3)」
慶応2(1866)年におこなわれた寅年御冠船を記録した文献。(南島採訪記より)
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参考文献:一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。 1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...
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