古典舞踊

「湊くり節」 - 古典舞踊/二才踊り

湊くり節:歌詞

 

かさに音たててかさにうとぅたてぃてぃ 降たる夏ぐれもふたるなつぃぐりん

なまや打ち晴れてなまやうちはりてぃ てだどてゆるてぃだどぅてぃゆる

 

なまや打ち晴れてなまやうちはりてぃ てだも照り勝ててぃだんてぃりまさてぃ

かなし思無蔵よかなしうみんぞよ 照らすとめばてぃらすとぅみば

 

笠に音たてて降った夏の雨(にわか雨)も、

今はすっかり晴れて太陽が照っている。

今は晴れあがって太陽も照り輝き、

愛しく思う貴女あなたを照らしているだろう。

無蔵んぞ

  • 無蔵んぞ」は男性が思いを寄せる女性に対して使う言葉。女性が思いを寄せる男性に使うときは「さとぅ」と呼ぶ。

 

中作田節:歌詞

 

月夜や月ともてつぃちゅやつぃちとぅむてぃ 明ける夜や知らぬあきるゆやしらん

女童腕枕みやらびうでぃまくら にや夜やあかちなゆやあかち

 

月夜の月(ひかり)と思って明ける夜も知らず(気づかず)、

乙女の腕枕うでまくらをしているうちに夜が明けてしまった。

女童みやらび

  • 乙女

 

浮島節:歌詞

 

今日や御行逢拝できゆやういちぇうがでぃ いろいろの遊びいるいるぬあすぃび

明日や面影のあちゃやうむかぢぬ 立ちゆと思みばたちゆとぅみば

 

今日はお逢いしてたくさん遊ぶことができた(楽しかった)が、

明日、面影おもかげが立つと思うと(心が切なくなります)。

面影うむかぢ

  • 心に思い浮かべる姿

 

高離節:歌詞

 

高離島やたかはなりしまや 物知らせどころむぬしらしどぅくる

にや物知やべたんにゃむぬしゃびたん 渡ちたばうれわたちたぼり

 

高離島たかはなりしまはものの哀れを教えてくれるところ

もう分かりましたので、故郷に渡して(帰して)ください。

高離島たかはなりじま

  • 沖縄県うるま市の勝連半島かつれんはんとうに属する宮城島みやぎじまの別称。周囲の島々に比べて海抜かいばつが高い地形で形成されている。

 

高離島(宮城島)

高離島(宮城島)

 

琉球古典舞踊 二才踊り「湊くり節」のイラスト

琉球古典舞踊 二才踊り「湊くり節」

 

演目:解説

 

あらまし

湊くり節んなとぅくいぶし(みなとくりぶし)」は手に持つ陣笠じんがさを軽快にあつかいながら泰平たいへいの世を寿ことほぎ、晴れやかな思いを太陽が照り輝く情景に映し重ねて描いた演目です。

陣笠じんがさ合戦時かっせんじに兵士が着用するかぶり物のことを指し、衣装は他の二才踊りにーせーうどぅいと同じく黒紋服くろもんぷくを着るならわしですが、時に水色などのさわやかな色の衣装を着て演じられることもあります。

 

みどころ

演目は各流派によって楽曲構成が大きく異なり、「湊くり節んなとぅくいぶし」を軸に後段は「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」、「高離節たかはなりぶし」、「浮島節うきしまぶし」、他数種の楽曲を組み合わせて演じられています。

また、同じ楽曲構成でも踊りの所作に違いがみられ、それぞれに工夫をこらしながら演じているため、本文では「湊くり節んなとぅくいぶし」、「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」の組み合わせにしぼり、演目全体の大まかな流れを記していきます。

前段「湊くり節んなとぅくいぶし」の前奏より、陣笠じんがさを手に持って舞台下手奥しもておくから上手奥かみておくへ向かって直線に歩み、”かさに音たててかさにうとぅたてぃてぃ”の歌い出しより陣笠じんがさを軽快にあつかいながら太陽が照り輝く情景を両手の振りにあらわして、晴れやかな心持ちを描いていきます。

演目全体を通して太鼓のリズムにあわせながら足拍子あしびょうしをとって、踊りにアクセントをつけていきます。

後段「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」では愛する人と共に過ごす一場いちじょうのよろこびを二才踊りにーせーうどぅいの力強い演技で展開し、争いのない平安な世を寿ことほぎながら踊りを納めていきます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

「杖笠」:二才踊り

湊くり節んなんとぅくいぶし」の歴史を紐解ひもといていくと、慶応2(1866)年の寅年御冠船とらどしうかんしん(※1)を記録した『踊番組』には演目の名前や楽曲の歌詞、表現形式に関連性のある二才踊りにーせーうどぅいがいくつか残されています。

その中に記録されている「杖笠」の演目を取り上げると、前段が「与那節ゆなぶし」、後段は「しゅさい節」で構成されています。

時代の流れと共にいくつかの演目を再編しながら、現代に受け継がれてきたのでしょう。

 

御冠船(※1)

琉球国王の即位時に、冊封使さっぽうしみんしんの使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。

皇帝より授けられた冠をたずさえて来航らいこうしたことから「御冠船うかんしん」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。

 

与那節

よなの高ひらや あせはてと登る

無蔵と二人なりは 車とふはる

 

与那の急な坂は汗を流して登るほど大変だが、

愛しい人と二人ならば牛車のように登れるのである。

 

しゅさい節

笠に音たてゝ ふたる夏くりや

なまや打晴て てたと照よる/\

 

笠に音をたてて降っていた夏雨(夕立ち)も、

今はすっかりと晴れて太陽が照り輝いている。

 

引用:『南島採訪記』

 

古典音楽

古典音楽のカテゴリーでは、「湊くり節んなとぅくいぶし」、「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」、「浮島節うきしまぶし」、「高離節たかはなりぶし」の曲目について解説しています。

 

雨上がりに照り輝く光(イメージ)
「湊くり節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   かさに音たててかさにうとぅたてぃてぃ 降たる夏ぐれもふたるなつぃぐりん なまやうちはれてなまやうちはりてぃ てだどて ...

続きを見る

夜明けの空
「中作田節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存  【工工四について】   歌詞   月夜や月ともてつぃちゅやつぃちとぅむてぃ 明ける夜や知らぬあきるゆやしらん 女童腕枕みゃらびうでぃまくら にや夜や ...

続きを見る

首里城祭
「浮島節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存 【工工四について】   歌詞   遊びぼしやあてもあすぃびぶしゃあてぃん まどに遊ばれめまどぅにあすぃばりみ 首里天ぎやなししゅゆゐてぃんぢゃなし お ...

続きを見る

高離島(宮城島)
「高離節」- 古典音楽

工工四 三線を再生印刷・保存  【工工四について】   歌詞   高離島やたかはなりしまや 物知せどころむぬしらしどぅくる にや物知やべたんにゃむぬしやびたん 渡ちたばうれわたちた ...

続きを見る

 


 

参考文献(沖縄の本)のイメージ画像
参考文献一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...

続きを見る

 

  • この記事を書いた人

マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた豆電球ほどの妖怪です。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

-古典舞踊
-,

Copyright © マブイ All Rights Reserved.