舞踊

「湊くり節」 - 古典舞踊/二才踊り

2020年4月2日

湊くり節んなとぅくいぶし:歌詞

 

笠に音たててかさにうとぅたてぃてぃ 降たる夏雨もふたるなつぃぐりん

今や打ち晴れてなまやうちはりてぃ 太陽ど照ゆるてぃだどぅてぃゆる

 

今や打ち晴れてなまやうちはりてぃ 太陽も照り勝ててぃだんてぃりまさてぃ

かなし思無蔵よかなしうみんぞよ 照らすとめばてぃらすとぅみば

 

笠に音たてて降った夏の雨(にわか雨)も、

今はすっかり晴れて太陽が照っている。

今は晴れあがって太陽も照り輝き、

愛しく思う貴女あなたを照らしているだろう。

 

 無蔵んぞ 

湊くり節んなとぅくいぶし」の一節、”かなし思無蔵よかなしうみんぞよ”の「無蔵んぞ」は、男性が思いをよせる愛しい女性のことを示す言葉です。
対して、女性が思いをよせる愛しい男性を言いあらわす場合は、「さとぅ」と呼びます。

 

中作田節ちゅうつぃくてんぶし:歌詞

 

月夜や月と思てつぃちゅやつぃちとぅむてぃ 明ける夜や知らぬあきるゆやしらん

女童腕枕みやらびうでぃまくら な夜や明かちなゆやあかち

 

月夜とばかり思って明ける夜も知らず、

乙女の腕枕うでまくらをしているうちに夜が明けてしまったようだ。

 

浮島節うきしまぶし:歌詞

 

今日や御行逢拝できゆやういちぇうがでぃ いろいろの遊びいるいるぬあすぃび

明日や面影のあちゃやうむかじぬ 立ちゆと思みばたちゆとぅみば

 

今日はお逢いして色々な遊びをすることができ(楽しかった)。

明日、(今日の)面影おもかげが立つと思うと(心惜しくなります)。

 

高離節たかはなりぶし:歌詞

 

高離島やたかはなりしまや 物知らせどころむぬしらしどぅくる

にや物知やべたんにゃむぬしゃびたん 渡ちたばうれわたちたぼり

 

高離島たかはなりしまは、不条理ふじょうりを教えてくれるところ

もう分かりましたので、故郷に渡して(帰して)ください。

 

高離島たかはなりしま

沖縄県うるま市の勝連半島かつれんはんとうに属する宮城島みやぎじまの別称で、周囲の島々にくらべ海抜かいばつが高い地形で形成されています。

 

高離島(宮城島)の空撮写真

高離島(宮城島)

 

高離節たかはなりぶし歌碑かひ

元は琉球王国の士族であった平敷屋朝敏へしきやちょうびんの妻である真亀まがみが残した琉歌です。

1734年、平敷屋朝敏へしきやちょうびんは琉球王府への体制批判を先導したことにより反逆はんぎゃくの罪で逮捕され、後に処刑されてしまいます。

残された妻の真亀まがみは子を連れて高離島たかはなりじまへ島流しにされ、身における立場の苦しさや離島で生活する地理的な厳しさを交えて琉歌にみこんでいった背景があります。

 

※略歴

平敷屋朝敏へしきやちょうびん(1701-1734)
沖縄県那覇市首里金城村に生まれる。(首里士族の家系)
和文学者、和文物語作者
作品には組踊くみうどぅいの「手水の縁てぃじむぬいん」をはじめ、「若草物語わかくさものがたり」、「苔の下こけのした」、「萬歳まんざい」、「貧家記ひんかき」、他に和歌や琉歌を残す。

 

高離節の石碑の写真

高離節の石碑

 

画像準備中のイラスト

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湊くり節んなんとぅくいぶし」:演目解説

 

あらまし

平安の世を寿ことほぎながら手に持つ陣笠じんがさを軽快にあつかい、晴れやかな思いを太陽が照り輝く情景に映し重ねて描いた演目になります。

陣笠じんがさ合戦時かっせんじに兵士が着用するかぶり物のことを指し、衣装は他の二才踊りにーせーうどぅいと同じく黒紋服くろもんぷくを着るならわしですが、時に水色などのさわやかな色の衣装を着て演じられることもあります。

 

みどころ

演目は各流派によって楽曲構成が大きく異なり、「湊くり節んなとぅくいぶし」を軸に、後段は「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」、「高離節たかはなりぶし」、「浮島節うきしまぶし」、他数種の楽曲を組み合わせて演じられています。

また、同じ楽曲構成でも踊りの所作に違いがみられ、それぞれに工夫をこらしながら演じているため、本文では「湊くり節んなとぅくいぶし」、「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」の組み合わせにしぼり、演目全体の大まかな流れを記していきます。

前段「湊くり節んなとぅくいぶし」の前奏より、陣笠じんがさを手に持って舞台下手奥しもておくから上手奥かみておくへ向かって直線に歩み、”笠に音たててかさにうとぅたてぃてぃ”の歌い出しより、陣笠じんがさを軽快にあつかいながら太陽が照り輝く情景を両手の振りにあらわして、晴れやかな心持ちを描いていきます。

演目全体を通して、太鼓のリズムにあわせながら足拍子あしびょうしをとって、踊りにアクセントをつけていきます。

後段「中作田節ちゅうつぃくてんぶし」では、愛する人と共に過ごす一場いちじょうのよろこびを二才踊りにーせーうどぅいの力強い演技で展開し、争いのない平安な世を寿ことほぎながら踊りを納めていきます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

「杖笠」:二才踊り

湊くり節んなんとぅくいぶし」の歴史を紐解ひもといていくと、「踊番組(※1)」には演目の名前や楽曲の歌詞、表現形式に関連性のある二才踊りにーせーうどぅいの記録がいくつか残されています。

その中に記されている「杖笠」という演目を取り上げてみると、前段が「与那節ゆなぶし」、後段は「しゅさい節」で構成されています。

時代の流れと共にいくつかの演目を再編しながら、現代に受け継がれてきたのでしょうか。

※「しゅざい節」は、「湊くり節んなんとぅくいぶし」の楽曲を指しています。(参照:「南島採訪記」より

 

「踊番組(※1)」

慶応2(1866)年におこなわれた寅年御冠船を記録した文献。(南島採訪記より

 

「杖笠」:二才踊

与那節:歌詞

よなの高ひらや あせはてと登る

無蔵と二人なりは 車とふはる

 

しゅさい節:歌詞

笠に音たてゝ ふたる夏くりや

なまや打晴て てたと照よる/\

 

引用:「南島採訪記」より

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

好きな食べ物:苔
好きな飲み物:葉先のしずく

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