揚作田節:歌詞
二葉から出でて 幾年が経たら
巌を抱き松の もたえ美らさ /\
訳
二葉から生じて(育って)、幾年が経ったのだろう。
大きな岩を抱くまでに茂った松の美しいことよ。
二葉
- 発芽して最初に出る二枚の葉のこと
- 幼少の頃
- 物事の初め
伊集早作田節:歌詞
蘭のにほひごころ 朝夕思とまれ
いつまでも人の 飽かぬごとに /\
訳
蘭の芳しい匂いのように朝夕(常々)思いとめて、
いつまでも人に飽きられないように心掛けましょう。
蘭
- 沖縄の島々には100種余りの蘭の原種が生息している
思とまれ
- 思いに留めて
- 心掛けて
演目:解説
あらまし
古典舞踊の位置づけ
略歴
■阿波連本啓(1903-2001)
沖縄県那覇市首里に生まれる。
阿波連本流啓扇会啓舞踊研究所会長
勲五等瑞宝章、沖縄文化連盟功労賞
代表する作品に「綱曳」、「築城」、「鏡」、「出陣」などがある。
みどころ
この演目は、複数の舞踊形式を内包しているため本文では近年によく演じられている「揚作田節」と「伊集早作田節」の二曲で構成される「扇子舞」を記していきます。
前段「揚作田節」の前奏で、舞台下手奥から上手奥へ直線を歩み、舞台中央で基本立ちになると、”二葉から出でて”の歌い出しより両手に持つ扇子を優美にあつかいながら人生を寿ぎ、演じていきます。
”巌を抱き松の”の一節では、両手に持つ扇子を前方に出して抱きかかえるように交差させ、岩を抱いた美しい松の情景を写実的に描いていきます。
次の反復句(※1)までの間奏部では、扇子を閉じて踊る一連の振りで演目に彩りをつけ、”もたえ美らさ”の一節で、斜めに扇子をはためかせて壮麗な趣を演出していきます。
後段「伊集早作田節」は、”蘭の匂い心”の一節で両手の扇子を頭上にかざして花に見立て、”朝夕思みとまれ”の一節では扇子を左右に靡かせながら蘭の香りの奥ゆかしさを表現していきます。
全体を通してテンポの良いリズムに足拍子をとりながら、二才踊りの精悍さをもって踊りを納めていきます。
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
反復句(※1)
旋律、句を繰り返すことを指します。
物語性を強調したり、楽曲のまとまりをよくするために使われます。
補足
字兼城の二才踊り「揚作田」
沖縄県南城市南風原町に伝わる字兼城の二才踊り「揚作田」は、「御冠船踊り(※2)」として旧暦の八月十五日におこなわれる村遊び(村の芸能、行事)で伝承され、無形民俗文化財に指定されています。
両手に麾を持ち、腰を深く入れた構え、活発な足の運び、力のこもった麾の手の振りなど、全体として動きが力強く大らかなところは、いかにも伝統の古さを感じさせる踊りとなっています。「揚作田節」に次の歌詞で踊られる。
同節:歌詞
常磐なる松の 変ること無いさめ
いつも春くれば 色どまさる
「御冠船踊り(※2)」
琉球国王の即位時に、冊封使(明、清の使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。
明、清の時代の皇帝より授けられた冠を携えて来航したことから「御冠船」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。
替え歌
旋律が借用され、原歌と替え歌の関係が派生したのは最古の歌謡が集録されている「おもろ」の時代からであり、今日に至るまで一つの伝統形式として成り立っています。
『おもろさうし』 は12世紀から17世紀にかけて島々で詠われていた歌謡を採録し、1531年から1623年にかけて編纂された最古の歌謡集です。
「おもろ」の語源は 「思い」 を意味します。
古典音楽
古典音楽のカテゴリーでは、「揚作田節」、「伊集早作田節」の曲目について解説しています。
「揚作田節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 豊なる御代のゆたかなるみゆぬ しるしあらはれてしるしあらわりてぃ 雨露の恵みあみつぃゆぬみぐみ 時もたがぬとぅちんたがん &n ...
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「伊集早作田節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 蘭のにほひごころらんぬにをぅいぐくる 朝夕思とまれあさゆうみとぅまり いつまでも人のいちまでぃんふぃとぅぬ 飽かぬごとにあかん ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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