古典舞踊

「江佐節」 - 古典舞踊/二才踊り

渡りざう、瀧落し:器楽曲

 

渡りざうわたりぞう」、「 瀧落したちをぅとぅし」は歌唱を伴わない楽器のみで演奏される器楽曲きがくきょくです。(インストゥルメンタル)

 

江佐節:歌詞

 

沈や伽羅とぼすぢんやちゃらとぅぶす 御座敷に出でてうざしちにいんじてぃ

踊るわが袖のをぅどぅるわがすでぃぬ 匂ひのしほらさにをぃぬしゅらしゃ

うやぐみさあてもうやぐみさあてぃん おそば寄たるうすばゆたる

 

沈香ぢんこう伽羅きゃら名香めいこう)をいたお座敷ざしきに出て、

踊るわがそでに移るにおい(香り)の奥ゆかしいことよ。

おそれ多いことではありますが、(貴人きじん)のおそばにお近づきになれました。

沈香ぢんこう伽羅きゃら(ちゃら)

  • 沈香ぢんこう伽羅きゃらはジンチョウゲ科の植物から採取される香材こうざいのことを指し、熱することにより芳香ほうこうはなつ。本来の木材に香りはなく、風雨や病気、害虫などにより傷ついた木が防御作用ぼうぎょさようとして樹脂を分泌し、長い年月をかけて熟成することで香材こうざいが形成される。樹脂が分泌したことによって木に重さが加わり、水に沈み込むことから沈香ぢんこうという名がつく。香材こうざいのなかでも香り高い上質なものを伽羅きゃらと呼び、その奥ゆかしい香りと希少性から古来より時の権力者が競って買い集め香りをたしなんでいた。そのため、伽羅きゃらきんと同じかそれ以上に高騰こうとうし、現在でも非常に高価な値段で取引されている。

 

香木(沈香、伽羅)

香木(沈香、伽羅)

 

琉球古典舞踊 二才踊り「江佐節」のイラスト

琉球古典舞踊 二才踊り「江佐節」

 

演目:解説

 

あらまし

江佐節えさぶし」は格式ある儀礼の場で踊るよろこびをあらわし、手に持つ扇子せんす風雅ふうがにあつかいながら演じられる祝儀舞踊しゅうぎぶようです。

沈香ぢんこう伽羅きゃらいて香りをたしなむ当時の風習や生活様式をうかがい知ることができます。

二才踊りにーせいうどぅいの特徴をよく示す演目ですが、各流派によって踊りの所作しょさに違いがみられ、衣装の色や着付けなども統一されていません。

 

みどころ

演目は器楽曲きがくきょくの「渡りざうわたりぞう」、「 瀧落したちをぅとぅし」と「江佐節ゐさぶし」の三曲構成で演じられます。

流派によって器楽曲きがくきょくの構成や踊りの所作しょさに違いがみられ、それぞれに工夫をこらしながら演じているため、本文では演目の大まかな流れを記していきます。

器楽曲きがくきょく渡りざうわたりぞう」の演奏より威風いふうのある歩みで登場し、舞台中央で基本立ちになると、地謡じうてーの掛け声と共に器楽曲きがくきょく瀧落したちをぅとぅし」に移り、空手の型を基礎とした一連の手踊りと足拍子あしびょうしをもって勇壮ゆうそうに演じていきます。

つづいて「江佐節ゐさぶし」では場を引き立てる囃子はやしにあわせながら手に持つ扇子せんすを巧みにあつかい、指を軸にして扇子せんすをクルクルと回転させるなど、随所ずいしょ大和芸能やまとげいのうの要素を取り入れた所作しょさをみることができます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

「両扇子」:二才踊り

江佐節えさぶし」の歴史を紐解ひもといていくと、慶応2(1866)年の寅年御冠船とらどしうかんしん(※1)を記録した『踊番組』には演目の名前や楽曲の歌詞、表現形式に関連性のある二才踊りにーせーうどぅいの記録(下記参照)が残されています。

時代の流れと共に、各演目を再編しながら現代に受け継がれてきたのでしょう。

 

御冠船(※1)

琉球国王の即位時に、冊封使さっぽうしみんしんの使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。

皇帝より授けられた冠をたずさえて来航らいこうしたことから「御冠船うかんしん」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。

 

「両扇子」:二才踊

東里節:歌詞

沈や伽羅とふす 御座敷に出て

をとるわか袖の 匂ひのしほらしや

 

同節:歌詞

ふた葉から出て いく年かひたら

岩ほたちまつの もたひ清らさ

 

「両扇子」:二才踊

亀甲ふし:歌詞

沈や伽羅とふす 御座敷に出て

をとるわか袖の 匂ひのしほらしや /\

 

引用:『南島採訪記』

 

古典音楽

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