工工四
歌詞
すんねくりふねの 行きゆる渡海やれば
今日や行ぎ拝で 明日や来ゆすが
訳
くり舟で渡ってゆける海であれば、
今日に行ってお会いし、明日には帰ることが出来るのだが。
すんねくりふね
- すんね = 丸木舟 『標準語引分類方言辞典/東京堂出版』
- くり舟も同じ意味で、丸太を刳り抜いて造られた小舟。同じ意味を持つ言葉をつないで連語表現としている。
渡海
- 海を渡る
解説
「武富節」は八重山諸島の西表島〜竹富島が発祥の地で、現地に伝わる八重山民謡「真栄節」が原歌であると云われています。
かつて八重山諸島に住む島の人々は、琉球王府が徴収する人頭税(税金)を工面するため、西表島へ強制移住を課され、一から水田を開墾し、お米作りをおこなってきた時代背景があります。
「真栄節」はその時代に恋人を残して離れ離れになった真栄という名の男の切情を詠み込んだ歌と云われています。
島々をつなぐ航路(難所)を、渡りがたい恋路(離れて会えない状況)に映し重ねて詠み込んだところにこの歌の趣きがあるのではないでしょうか。
補足
舞踊演目
「武富節」は「南嶽節」と組み合わせで、娘の恋心を晴れやかに踊る雑踊り(※1)「貫花」の演奏曲として構成されています。
雑踊り(※1)
明治16年(1883)頃、琉球芸能が初めて入場料を取って興行がおこなわれて以来、芝居小屋で創作振り付けられた近代の舞踊。
琉球王朝が崩壊した後、歓待芸能を職としていた者が率いて踊りを披露していました。
南嶽節(舞踊「貫花」より)
1.
できやよおしつれて あたり花もりが
花や露かめて もりやならぬ
ヘイヤヨーヌ ヒヤルガヒ
2.
白瀬走川に 流れよる桜
すくて思里に 貫きやりはけら
ヘイヤヨーヌ ヒヤルガヒ
3.
赤糸貫花や 里にうちはけて
白糸貫花や よえれ童
ヘイヤヨーヌ ヒヤルガヒ
訳
1.
さあ、一緒に屋敷の裏に咲いている花を摘みにいきましょう。
(しかし)花が露に濡れているので摘むことができません。
2.
白瀬走川に流れる桜の花を
すくって愛しい人に首飾りを作ってお掛けしたい。
3.
赤い糸で貫いた花は愛しい人の首にかけて
白い糸で貫いた花は子供に授けましょう。
あたり
- 屋敷のまわり
- 屋敷の裏
白瀬走川
- 久米島の宇江城岳(標高309m)から兼城湾に流れる白瀬川のこと。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る