工工四
歌詞
伊集の木の花や あんきよらさ咲きより
わぬも伊集やとて 真白咲かな
訳
伊集の木の花はあんなに美しく咲いている。
わたしも伊集の花のように真白い花を咲かせたい。
伊集
- ツバキ科ヒメツバキ属の常緑高木(10メートル以上に成長)。木の枝一面に愛嬌のある白い花をつける。
あん
- あんなに
きよら
- 清らかで美しい
解説
「辺野喜節」は国頭郡国頭村辺野喜が発祥の地で、国道58号線沿いの辺野喜橋の袂には本曲の歌碑が建てられています。
山原(※1)の地に育つ伊集の木は成長すると10メートル以上にもなり、木の枝一面に咲く白い花は緑豊かな大自然の中で一際に映えます。
「辺野喜節」はこの愛嬌ある清らかな伊集の木の花を讃えて詠まれた歌曲です。
また、本曲は古典音楽「伊集之木節」が原歌となり、琉歌も同じ内容で詠われていますが、「伊集之木節」の上句”あがきよらさ咲きより”の”あが”の田舎言葉を、本曲では首里言葉”あん”に替えて、”あんきよらさ咲きより”と歌い直しています。
「辺野喜節」は曲想や演奏時間による組み合わせが良いこともあり、今日では祝いの席で演奏される御前風五節の「長伊平屋節」の代わりによく演奏されるようになりました。
山原(※1)
沖縄県北部の地域一帯。
山や森など緑豊かな自然環境が残されており、山原地域固有の植物や動物が生息している。
補足
逸話
「辺野喜節」の創作背景として一つのエピソードが語り継がれています。
琉球国王の御側女に中城村伊集出身の色白の美人がおりましたが、王様はこの伊集のアヤーをすごく愛されて、王妃様もほったらかしにされました。
でも、王妃様は御上品な方ですから悋気(焼きもち)などなさらずに、ただ伊集のアヤーの美しさに「私もあやかりたい」という御歌を詠まれ御心を安じられました。
その御歌が、この「辺野喜節」になったということです。
引用:『嗣周・歌まくら』那覇出版社
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは、「辺野喜節」が歌詞を替えて演奏される「若衆麾」の演目について解説しています。
「若衆麾(ゼイ)」 - 古典舞踊/若衆踊り
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参考文献一覧
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