工工四
歌詞
常盤なる松の 変わる事無さめ
何時も春来りば 色ど勝る
訳
四季を通して緑に生い茂る松は、永遠に変わることはありません。
いつものように春が訪れれば、さらに緑色が増すばかりです。
常盤
- 春夏秋冬、一年を通して緑色の常緑樹のこと。
解説
「垣花節」は南城市玉城垣花が発祥の地で、歌詞は「特牛節(こてい節)」と同じ内容で詠まれています。
一年を通して枯れることのない松の生命力にあやかり、人生の幸先を予祝した歌曲です。
沖縄の県木に指定されている「琉球松」は青々とした葉とその美しい枝ぶりが特徴的な常緑樹で、正月飾りをはじめお祝いの縁起物に用いられることが多く、古くより人々の生活に寄り添ってきました。
「垣花節」を含め「伊江節」、「世栄節」、「揚沈仁屋久節」の本歌四曲を”世栄一鎖”と称し、座歌として歌う慣わしがあります。
補足
円覚寺節(垣花節)
最古の琉歌集である『琉歌百控』(※1)には恋歌的な琉歌を中心に「垣花節」が6節収められています。
その中の一つに歌の主題となる寺院の名をとって別名「円覚寺節」と呼ばれる歌曲があります。
『琉歌百控』(※1)
上編「乾柔節流」、中編「独節流」、下編「覧節流」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂された最も古い琉歌集です。
円覚寺節(垣花節)
円覚寺御門の 鬼仏がなし
我無蔵よこしゆすや (目張り口張り) おどちたばうれ
訳
円覚寺(※1)の御門の両脇に厳めしい恰好して立っている仏様、
私の恋人を横取りしようとする輩は、目や口を大きく開いて嚇してやってください。
鬼仏がなし
- 鬼のように厳めしい恰好をしている仏様
- 仁王像
無蔵
- 「無蔵」は男性が思いを寄せる女性に対して使う言葉。女性が男性を呼ぶときは「里」と呼ぶ。
よこしやすや
- 誘惑する
- 横取りする
円覚寺
1494年、那覇市首里当蔵町に建立された琉球建築のお寺です。
当時、国王であった尚真王が亡き父の尚円王を祀るために建立された菩提寺で、旧国宝に指定されていましたが戦争によって放生橋を残し焼失しました。
円覚寺の景観
首里当蔵町の円覚寺周辺は景観がよく、恋人同士の散歩道に適していたようです。
円覚寺総門の左右には厳めしい姿で口を開いた阿形像と口を結んだ吽形像の一対の仁王像が立てられていました。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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