舞踊

「四季口説」 - 古典舞踊/若衆踊り

2020年4月30日

四季口説しちくどぅち節口説しつぃくどぅち):歌詞

1.

さても目出度やさてもめでたや 新玉のあらたまの 春は心もはるはこころも 若がえてわかがえて 四方の山辺のよものやまべの 花盛りはなざかり

囃子はやし長閑なる代ののどかなるよの 春を告げ来るはるをつげくる 深山鶯みやまうぐいす

2.

夏は岩間をなつはいわまを 伝え来てつたえきて 瀧つふもとにたきつふもとに 立ち寄ればたちよれば 暑さ忘れてあつさわすれて 面白やおもしろや

囃子はやし風も涼しくかぜもすずしく 袖に通ひてそでにかよいて 夏もよそなるなつもよそなる 山の下かげやまのしたかげ

3.

秋は尾花があきはおばなが 打ち招くうちまねく 園のまがきにそののまがきに 咲く菊のさくきくの 花の色々はなのいろいろ 珍らしやめずらしや

囃子はやし錦さらさとにしきさらさと 思ふばかりにおもうばかりに 秋の野原をあきののはらを 千草色めくちぐさいろめく

4.

冬は霰のふゆはあられの 音添えておとそえて 軒端の梅ののきばのうめの 初花のはつはなの 色香も深くいろかもふかく 愛であかぬめであかぬ

囃子はやし花か雪かとはなかゆきかと いかで見わけんいかでみわけん 雪の降る枝にゆきのふるえに 咲くやこの花さくやこのはな

 

1.

おめでたい新年の春は心も若返るように、そこかしこの山辺やまべに花が咲き誇る季節である。

囃子はやし平穏へいおんな世の春を告げに来る深山みやまうぐいす。)

2.

夏は岩間いわま辿たどって滝の流れるふもとに立ち寄ると、(そこには)暑さも忘れるおもむきがある。

囃子はやし(風も涼しくそでに通れば、夏の暑さも気にならない山の岩陰いわかげ。)

3.

秋はススキがまねき、庭のまがきに咲く菊の花は色とりどりで素晴らしい。

囃子はやし錦更紗にしきさらさと思うほどに、秋の野原を色々な草が彩る。)

4.

冬はあられの音がして、軒端のきばの梅の初花の色と香りも深く、愛して止まない。

囃子はやし(花か雪かと、どうして見分けようか。雪の降り積もった枝に咲いたこの花。)

 

口説くどぅち

18世紀頃に本土から伝わってきた音楽の形式で、七句と五句を繰り返す七五調しちごちょうのリズミカルなふしまわしに心情しんじょうを述べていきます。(琉歌りゅうかは八八八六調の形式)

 

深山みやまうぐいす

山の奥深おくぶかくに潜んでいるうぐいすが、春の訪れを知らせる様子をあらわしています。

 

木の枝に乗る鶯

鶯(うぐいす)

 

尾花おばな

ススキの別称で、動物の尾に似ていることからその名が付きました。

 

ススキの画像

ススキ

 

まがき

竹、柴を編んでつくった垣。

 

籬のイメージ画像

籬(まがき)

 

錦更紗にしきさらさ

色彩豊かな文様もんようを染めた布(木綿もめんきぬ)。

 

諸織物縞本集帳附録古代切帳の文献画像

諸織物縞本集帳附録古代切帳 ※見開き切り抜き改変 - 提供:国立国会図書館

 

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四季口説しちくどぅち」:演目解説

 

あらまし

四季の情景じょうけいみこんだ七五調しちごちょう口説くどぅちにあわせて、両手にもつ扇子せんす優雅ゆうがにあつかいながら演じる若衆踊りわかしゅうどぅいです。

この演目の特徴は、舞手が各節の囃子はやしとなえ、春夏秋冬のいろどりを引き立てながら踊る表現形式にあります。

また、口説くどぅちの内容は日本本土の情景じょうけいつづられており、江戸上り(※1)がおこなわれていた琉球王府時代に、大和芸能を積極的に取り入れて新しい沖縄芸能の開花を迎えた背景を伺い知ることができます。

 

江戸上り(※1)

徳川将軍の襲封しゅうほう時のお祝いに派遣される慶賀使けいがしと、琉球国王の即位時のお祝いに派遣される恩謝使しゃおんしが江戸幕府へおもむくことを指します。

寛永11(1634)年より計18回おこなわれ、琉球王府の使節団は各100名前後で構成されていました。

 

御免琉球人行列附の画像

御免琉球人行列附 - 提供:国立国会図書館

 

古典舞踊の位置づけ

四季口説しちくどぅち」は、天保てんぽう三(1832)年に薩摩屋敷さつまやしきで演じられた記録が残されており、演目名は「節口説しつぃくどぅち」と記されています。

舞台表現も古典の様式を踏襲とうしゅうしているため、本サイトにおいては古典舞踊の若衆踊りわかしゅうどぅいとして紹介します。

『沖縄舞踊の歴史』、『小唄打聞 - 琉球唄十四章』(参考文献:一覧

 

みどころ

演目は「四季口説しきくどぅち」の一曲に振り付けられ、春夏秋冬の情景じょうけいを描きながら若衆わかしゅ清伯せいはくさをもって演じていきます。

1番「春」をうたった口説くどぅちの歌い出しより、両手に持つ扇子せんす優雅ゆうがにあつかいながら、太鼓のリズムに足拍子あしびょうしをあわせて踊っていきます。

囃子はやしの”深山鶯みやまうぐいす”の一節では、片手を上げ扇子せんすの表面をみせる振りに春の訪れを知らせにきたうぐいすの様子をあらわし、つづく2番「夏」をうたった囃子はやしの”山の下かげやまのしたかげ”の一節で、両手を上部にかざして岩陰をつくる所作しょさを演じます。

3番「秋」をうたった”秋は尾花があきはおばなが 打ち招くうちまねく”の一節では、両手に持つ扇子せんすなびかせながらススキの姿を風情ふぜいよくあらわし、4番「冬」をうたった”冬は霰のふゆはあられの 音添えておとそえて”の一節で、片手に持つ扇子せんすを上部から小刻こきざみに揺らし、斜めにろす動作にあられの降る情景じょうけい写実的しゃじつてきに描いていきます。

流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。

 

補足

 

各島の「四季口説しきくどぅち

沖縄本島より北西9kmに位置する伊江島いえじまでは「四季口説しきくどぅち」が二才踊りにーせいうどぅいの演目として伝承でんしょうされ、島内の東地区(東江上ひがしえうえ東江前ひがしえまえ阿良あら)と西地区(西江上にしえうえ西江前にしえまえ川平かわひら西崎にしざき)では、それぞれに踊りの所作しょさや楽曲の歌詞に違いがみられます。

参考サイト:伊江村役場 - 伝統文化

 

他にも、奄美群島あまみぐんとうの南西部に位置する沖永良部島おきのえらぶじまでは、「国頭字くにがみあざ 四季口説しちくどぅち」という演目名で現在まで独自に伝承でんしょうされてきました。

各島によって、演目の表現体系に違いがみられますが、四季のいろどりをうたった内容は共通しています。

 


 

参考文献(本)のイメージ画像
参考文献:一覧

書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において、参考にした全ての文献をご紹介します。     1.『定本 琉球国由来記』 著者:外間 守善、波 ...

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マブイ

ニライカナイから遊びにやってきた精霊。
伝統芸能の継承と発展を見守りつづけています。

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