工工四
歌詞
七読と二十読 綛かけておきゆて
里が蜻蛉羽 御衣よすらね
訳
七読と二十読の糸を糸巻きに巻いて(機織に)設置し、
愛しいあなたのためにとんぼの羽のように美しい着物を織って差し上げましょう。
七読と二十読
- 「読」とは織り機に掛ける糸の本数を示した単位で、80本を一読とし、七読~二十読の単位を示す。
綛かけ
- 紡いだ糸をH型の枠に巻き取って綛の状態(扱いやすく束ねる)にした後、機織に設置する糸巻きに必要な長さの糸を巻き付ける作業工程を指します。
里
- 「里」は女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に対して使うときは「無蔵」と呼ぶ。
蜻蛉羽
- トンボの羽
解説
「七尺節」はトンボの羽のように薄くて上質な着物を織って差し上げたいと、愛しい人を思う女性の慕情を詠み込んだ歌曲です。
かつて沖縄の女性は庭に植えてある苧麻(糸芭蕉)から繊維を剥ぎとって糸を紡ぎ、着物に仕立てるまでのすべての工程を手仕事でおこなっていました。
暑い夏を過ごすために薄くしなやかに織られた生地は風通しが良く、トンボの羽のように美しい着物は涼しさの印象と重なり、古くから人々の心を魅了してきました。
補足
節名について
一説によると、本曲は「七読節」という節名が本来であったが、いつしか誤って伝承され、「七尺節」と呼ばれるようになったと云われています。
琉球古典音楽は歌詞に含まれる言葉を節名に命名することが多く、『標音評釈・琉歌全集/武蔵野書院版』には「恩納節」、「伊野波節」をはじめ45曲もの歌曲が適用されています。
組踊
三千首の琉歌を収めた『標音評釈・琉歌全集/武蔵野書院版』には十六首の「七尺節」が収録されており、悲恋を中心に詠まれた琉歌が収められています。
組踊(※1)の演目では、「執心鐘入」、「手水の縁」をはじめ、おもに愛する人のもとへ向かう道行の場面で「七尺節」が演奏されます。
組踊(※1)
琉球王国時代の1719年に踊奉行(式典の際に舞台を指揮、指導する役職)の任命を受けた玉城朝薫により創始された歌舞劇です。
台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。
略歴
■玉城朝薫(1684年-1734年)
首里儀保村に生まれる。
琉球王国の官僚で冊封式典の踊奉行を務める。国劇である組踊の創始者であり、多くの芸術作品を生み出す。
「二童敵討」、「執心鐘入」、「銘苅子」、「孝行の巻」、「女物狂」を朝薫五番と称す。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「七尺節」が舞踊曲として演奏される「綛掛(かせかけ)」について解説しています。
「かせかけ」 - 古典舞踊/女踊り
干瀬節:歌詞 七読と二十読ななゆみとぅはてん 綛かけておきゆてかすぃかきてぃうちゅてぃ 里が蜻蛉羽さとぅがあけずぃば 御衣よすらぬんしゅゆすぃらに 訳 七読ななゆみと二十読 ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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