渡りざう、瀧落し:器楽曲
「渡りざう」、「 瀧落し」は歌唱を伴わない楽器のみで演奏される器楽曲です。(インストゥルメンタル)
江佐節:歌詞
沈や伽羅とぼす 御座敷に出でて
踊るわが袖の 匂ひのしほらさ
うやぐみさあても おそば寄たる
訳
沈香や伽羅(名香)を焚いたお座敷に出て、
踊るわが袖に移る匂い(香り)の奥ゆかしいことよ。
畏れ多いことではありますが、(貴人)のお側にお近づきになれました。
沈香と伽羅(ちゃら)
- 沈香と伽羅はジンチョウゲ科の植物から採取される香材のことを指し、熱することにより芳香を放つ。本来の木材に香りはなく、風雨や病気、害虫などにより傷ついた木が防御作用として樹脂を分泌し、長い年月をかけて熟成することで香材が形成される。樹脂が分泌したことによって木に重さが加わり、水に沈み込むことから沈香という名がつく。香材のなかでも香り高い上質なものを伽羅と呼び、その奥ゆかしい香りと希少性から古来より時の権力者が競って買い集め香りを嗜んでいた。そのため、伽羅は金と同じかそれ以上に高騰し、現在でも非常に高価な値段で取引されている。
演目:解説
あらまし
「江佐節」は格式ある儀礼の場で踊る慶びをあらわし、手に持つ扇子を風雅にあつかいながら演じられる祝儀舞踊です。
沈香や伽羅を焚いて香りを嗜む当時の風習や生活様式をうかがい知ることができます。
二才踊りの特徴をよく示す演目ですが、各流派によって踊りの所作に違いがみられ、衣装の色や着付けなども統一されていません。
みどころ
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
補足
「両扇子」:二才踊り
「江佐節」の歴史を紐解いていくと、慶応2(1866)年の寅年御冠船(※1)を記録した『踊番組』には演目の名前や楽曲の歌詞、表現形式に関連性のある二才踊りの記録(下記参照)が残されています。
時代の流れと共に、各演目を再編しながら現代に受け継がれてきたのでしょう。
御冠船(※1)
琉球国王の即位時に、冊封使(明、清の使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。
皇帝より授けられた冠を携えて来航したことから「御冠船」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。
「両扇子」:二才踊
東里節:歌詞
沈や伽羅とふす 御座敷に出て
をとるわか袖の 匂ひのしほらしや
同節:歌詞
ふた葉から出て いく年かひたら
岩ほたちまつの もたひ清らさ
「両扇子」:二才踊
亀甲ふし:歌詞
沈や伽羅とふす 御座敷に出て
をとるわか袖の 匂ひのしほらしや /\
引用:『南島採訪記』
古典音楽
古典音楽のカテゴリーでは、「渡りざう」、「 瀧落し」、「江佐節」の曲目について解説しています。
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参考文献一覧
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