工工四
歌詞
久米の五葉の松 下枝の枕
思童無蔵や 我腕枕
訳
久米島の五葉松は下枝を枕にしている。
愛しい彼女は私の腕を枕にしている。
はんた
- 端
- はしっこ
- 崖のふち
五葉の松
- 島尻郡久米島町上江洲にある県立自然公園・五枝の松園地に生育するリュウキュウマツ(名称:久米の五枝の松)。国指定天然記念物であり、見事な枝ぶりが特徴的な松の木である。
思童無蔵
- 愛しい彼女
※思童 = かわいい子供、愛らしい子供、お子さん(子供の敬語)。無蔵 = 親しみを込めて男性が女性を呼ぶときの言葉。これらの二つの言葉を掛け合わせて「愛しい彼女」と解釈するようである。
解説
「久米はんた前節」は沖縄本島から西へ約100kmに位置する久米島が発祥の地で、島尻郡久米島町上江洲にある県立自然公園・五枝の松園地には本曲の歌碑が建てられています。
園内には”五枝の松”の愛称で知られる大きな松の木が育成されており、古くは農業の神様を祀ったときに植樹されたと伝えられています。
四方に広がる見事な松の枝葉に、自身の腕枕の姿を映し重ねて詠み込んでいます。
補足
原歌
「久米はんた前節」と、「中城はんた前節」の原歌となる歌碑が同じ島内(島尻郡久米島町具志川)にある宇根仲泊線(おばけ坂付近)に建てられています。
また、最古の琉歌集である『琉歌百控』(※1)には「半田前節」の節名で同じ琉歌が収められており、出自には”久米嶋(久米島)”と記されています。
『琉歌百控』(※1)
上編「乾柔節流」、中編「独節流」、下編「覧節流」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂された最も古い琉歌集です。
久米はんた前節(原歌)
はんた前の下り 溝わてどよこす
三十ませ三ませ 真水こめて
訳
はんた前の傾斜地に溝を掘って水を引く。
たくさんの田んぼに水がいきわたり、なんと喜ばしいことでしょう。
三十ませ三ませ
- ませ = 田の区画。壮大な田園風景をあらわしている。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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