工工四
歌詞
あの伊集の花や あがきよらさ咲きゆり
わぬも伊集やとて 真白咲かな
訳
あの伊集の花はあんなに清らかで美しく咲いている。
わたしも伊集の花のように真白い花を咲かせたい。
伊集
- ツバキ科ヒメツバキ属の常緑高木(10メートル以上に成長)。木の枝一面に愛嬌のある白い花をつける。
あが
- あんなに
きよら
- 清らかで美しい
解説
「伊集之木節」は山原(※1)の森に咲く伊集の白い花を讃え、我が身もその美しさにあやかりたいと詠み込んだ歌曲です。
かつて「伊集之木節」が首里の王族の間で好まれて詠まれるようになり、発祥の地である国頭郡国頭村辺野喜の地名より命名した古典音楽が「辺野喜節」と云われています。
また、「伊集之木節」の上句”あがきよらさ咲きより”の”あが”の田舎言葉を、「辺野喜節」では首里言葉”あん”に替えて、”あんきよらさ咲きより”と歌い直しています。
最古の三線楽譜である『屋嘉比工工四』(※2)には「イヂヨノキブシ」の節名が収められており、出自には「辺野喜節トモ云う」と記されています。
山原(※1)
沖縄県北部の地域一帯。
山や森など緑豊かな自然環境が残されており、山原地域固有の植物や動物が生息している。
屋嘉比工工四(※2)
琉球音楽家の屋嘉比朝寄(1716-1775)によって編み出された記譜法により創案された現存する最も古い三線楽譜です。(117曲編纂)
補足
逸話
「辺野喜節」の創作背景として一つのエピソードが語り継がれています。
琉球国王の御側女に中城村伊集出身の色白の美人がおりましたが、王様はこの伊集のアヤーをすごく愛されて、王妃様もほったらかしにされました。
でも、王妃様は御上品な方ですから悋気(焼きもち)などなさらずに、ただ伊集のアヤーの美しさに「私もあやかりたい」という御歌を詠まれ御心を安じられました。
その御歌が、この「辺野喜節」になったということです。
引用:『嗣周・歌まくら』那覇出版社
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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