工工四
歌詞
霰さらさらと 庭の高こばに
音たてて降ゆる としや世果報
訳
霰がさらさらと庭の高クバに、
音を立てて降る年は豊年になる。
霰
- 直径5mm未満の氷粒。5mm以上のものは雹として区別される。
高こば
- クバはヤシ科の常緑樹、別名ビロウと呼ぶ。クバには「高クバ」と「地クバ」があり、「高クバ」は幹が高く葉は大きく育つのに対し、「地クバ」は背が低く葉は小さい性質をもつ。
世果報
- 弥勒様がもたらす穏やかで平和な世の中
- 幸福で実り豊かな世の中
- 泰平な世
- 豊年
解説
「赤田花風節」は厳しい寒さを乗り越えて迎える一年の豊作に、人の成長過程を準えて詠み込んだ人生訓的な歌曲です。
沖縄では霰が降るほど冷え込む季節になると害虫の発生を抑えることにつながるため、その一年は豊作になると云われています。
人間も一定の厳しい環境下に置かれることで、自己成長につながることは一種の自然の摂理であるように思います。
補足
降雪の記録
1972年の5月以降、沖縄の本土復帰を機に設置された沖縄気象台では、過去2回(1977年2月、2016年1月)に雨のような雪が降った記録が残されています。
昨今、温暖化の影響で気温が少しずつ上昇してきましたが、当時は今より気温が低かったことを考えると、歌に詠まれているように沖縄にも霰が降っていたのかもしれません。
舞踊演目
「赤田花風節」は「揚作田節」、「東里節」の組み合わせで演奏されることがあり、子孫繁栄、長寿を寿ぐ祝儀舞踊「松竹梅」では梅の踊りの演奏曲として構成されています。
赤田花風節(舞踊「松竹梅」より)
梅だいんす雪に つめられてど後ど
花も匂ましゆる 浮世だいもの
訳
梅でさえも雪にうずもれた後、
花の香りが一層増すのがこの世の(摂理)である。
だいんす
- ~でさえ
だいもの
- ~である
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る