工工四
【工工四について】
歌詞
按司添が御船 渡中おし出れば
波は押しそひて はるがきよらさ
訳
按司が乗っておられる御船が沖に出ると、
波を押しきって走る姿が壮観である。
按司
- 按司は国王の親族に位置する特権階級で若按司は按司の子にあたる。各地域を領地として与えられ自陣の領地の名をとって家名にする習わしがある。
添
- 敬称の接尾語
渡中
- 海上
- 沖
はる
- 走る
解説
波を押しきり悠然と走る王族の船に、琉球王国の泰平を寿いで詠まれた歌曲です。
「揚沈仁屋久節」は収録されている史料（琉歌集や工工四）によって節名に違いが見受けられます。
一説によると、本曲はかつて「沈仁屋久節」という節名でしたが、同じ囃子詞（～ヂンニヤク）で詠まれている「高覆盆子節」をいつしか「沈仁屋久節」と呼ぶようになり、両曲を区別するために調子の高い本曲を「揚沈仁屋久節」と呼ぶようになったと云われています。参考：『歌三線の世界／ゆい出版』
沖合に出る
補足
組踊
三千首の琉歌が収められた『標音・評釈 琉歌全集／武蔵野書院版』には、踊奉行（※1）の田里朝直が創作した一首の琉歌が収録されており、組踊（※2）「大城崩」の一幕で演奏されます。
踊奉行（※1）
王国の式典の際に舞台を指揮、指導する役職です。
組踊（※2）
琉球王国時代の1719年に踊奉行（式典の際に舞台を指揮、指導する役職）の任命を受けた玉城朝薫により創始された歌舞劇です。
台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。
略歴
■田里朝直（1703年-1773年）
1756年の冊封式典で踊奉行を務める。
代表作である「万歳敵討」、「義臣物語」、「大城崩」を朝直の三番と称す。
揚沈仁屋久節（作：田里朝直）
けふのほこらしやや 木草色かはて
ひでりしゆる頃の 雨きやたごと
訳
今日の嬉しさは木や草が枯れて色が変わり、
日照りしている時に、雨が会った（降った）ようだ。
雨きやたごと
- 雨に会ったようだ
「大城崩」
虎千代と金松の兄弟が、馬天浜で殺されようとしたとき、大城若按司が義に感じて、処刑を許したので、兄弟とその母が喜んで帰る際の歌である。
引用：『標音・評釈 琉歌全集／武蔵野書院版』
世栄一鎖
本曲を含め「伊江節」、「世栄節」、「垣花節」の四曲を”世栄一鎖”と称し、座歌では本歌で歌う慣わしがあります。
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参考文献一覧
書籍／写真／記録資料／データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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