工工四
歌詞
あがり立つ雲や 世果報しによくゆり
あそびしによくゆる はたちめやらべ
訳
東に浮かぶ雲は実り豊かな世を招き、
(その兆しをみて)宴の準備をする年頃の娘。
あがり立つ雲
- あがり = 東
- 東雲 = 明け方
- 東の空にわき立つ雲
- 東に浮かぶ雲
世果報
- 弥勒様がもたらす穏やかで平和な世の中
- 幸福で実り豊かな世の中
- 泰平な世
- 豊年
しによくゆり
- 準備する
- 支度する
- 手配する(招く)
あそび
- 集い
- 宴
- 催し事
めやらび
- 女童
- 乙女
- 娘
解説
「立雲節」は暗闇だった空が東方から徐々に明るんでゆく光景に、実り豊かな世を願う人々の祈りを託して詠まれた歌曲です。
自然との対話、神への祈りが重要視された時代、島各地では豊穣祈願をテーマとする芸能・行事が盛んにおこなわれていました。
東の空に浮かぶ雲が朝焼けに照らされて荘厳な赤色に染まることを『アガリ立雲』と呼び、目出度いことの前ぶれであると古くより言い伝えが残されていました。
補足
結びの曲
演奏会などでは「ニ揚独唱曲」の哀調ある曲想におさまりをつけるため、祝儀的要素を含んだ「立雲節」、「ヨシヤイナウ節」、「白鳥節」、「古見之浦節」の内いずれか一曲を斉唱して閉会する習わしがあります。
組踊
三千首の琉歌を集録した『標音評釈・琉歌全集/武蔵野書院版』には十四首の「立雲節」が収められており、おもに世の泰平を自然の情景に映し重ねて詠まれた琉歌が収められています。
組踊(※1)の演目では、「銘苅子」、「手水の縁」をはじめ、物語の終盤で再会を果たし喜びを表現する場面で「立雲節」が演奏されます。
組踊(※1)
琉球王国時代の1719年に踊奉行(式典の際に舞台を指揮、指導する役職)の任命を受けた玉城朝薫により創始された歌舞劇です。
台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。
略歴
■玉城朝薫(1684年-1734年)
首里儀保村に生まれる。
琉球王国の官僚で冊封式典の踊奉行を務める。国劇である組踊の創始者であり、多くの芸術作品を生み出す。
「二童敵討」、「執心鐘入」、「銘苅子」、「孝行の巻」、「女物狂」を朝薫五番と称す。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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