つなぎ節:歌詞
あたり苧やうみやり はたいん布織やり
玉黄金里が 御衣よすらね
訳
屋敷のまわりの畑に植えてある苧を績んで極上の布を織り、
大切な愛しい人へ着物をつくって差し上げましょう。
あたり
- 屋敷のまわり
- 屋敷の裏
うみやり
- 績む = 苧麻や糸芭蕉などの繊維を均一に細く剥ぎ取り、つなぎ合わせる(撚り合わせる)作業。
苧
- 学術的には植物の苧麻(別名:からむし)のことを指しますが、沖縄本島では糸芭蕉に対しても同じく「苧」と呼んでいることから両方の植物を演目の解釈として示す。
はたいん
- はたいん= 二十読。織り機に掛ける糸の本数を示した単位。80本を一読とし、廿読(二十読)は1600本の糸で織られている。
玉黄金里
- (玉や黄金のように)大切な人。
- 「里」は女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。
清屋節:歌詞
あたり苧の中ご 真白ひき晒ち
里があかいず羽 御衣よすらね
訳
屋敷内の畑に植えた苧の芯部を真っ白にさらして、
大切な人へとんぼの羽のように薄くて上質な着物をつくって差し上げましょう。
中ご
芯。
里
女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に使うときは「無蔵」と呼ぶ。
あかいず羽
秋津 = 蜻蛉の古い呼び名。
演目:解説
あらまし
「苧引」は糸を紡いで仕立てる一連の手仕事をこまやかな指先と美しい手踊りであらわした演目です。
かつて沖縄の女性は植えてある苧麻(糸芭蕉)から繊維を剥ぎとって糸を紡ぎ、着物に仕立てるまでの全工程を手仕事でおこなっていました。
この手間のかかる一連の作業を主題として、大切な人を想う心を写し重ねて舞踊化したところにこの演目の深い趣があります。
他の古典舞踊(女踊り)と比べると演目時間は短いですが、一連の手踊りが全体を美しく仕上げ、限られた時間の中にも琉球舞踊の魅力が凝縮された演目になります。
苧引
採取した苧麻(別名:からむし)や糸芭蕉の外側の皮を剥いでから、不純物を取り除くために木灰(アルカリ成分)をくわえて煮込みます。
厳密には苧引の工程はここからで、煮込んだ皮を竹ばさみに挟んで何度も丁寧に擦ることで不純物を取り除き、上質な繊維を採取する工程範囲を指します。
苧麻(別名:からむし)や糸芭蕉の繊維は丈夫で光沢に富むことから布生地の材料として使われてきました。
みどころ
※流派によっては、演目構成や所作が異なる場合があります。
《抱き手※1》
両手を広げて包み込み、赤子を抱いているような動きをとる技法。
《袖とり※2》
袖を両手ですくあいげる技法。
苧引の復活
戦後、久しく途絶えていた「苧引」を柳清会の比嘉清子師が、1967年(昭和42年)に復活上演し、改めて注目されるようになりました。
また、「苧引」は「本貫花」にかわって女七踊りの一つという説があります。
各島にある「苧引」
八重山に「苧引」という同じ名前の演目があります。
「たらくじ節」、「くしとうばる節」の二曲で構成されており、女性が大切な人へ旅立ちの祈りをこめて手ぬぐいを贈る内容で描かれています。
小浜島では琉球王府に納める布を織る内容として伝承され、アッカイ(杓子)とフドーシ(糸を巻く竹管)を手に持ち、肩にたらした苧を手に取り演じています。
※略歴
■比嘉清子(1915-1993)
沖縄県那覇市泉崎に生まれる。
柳清会家元
県指定無形文化財「沖縄伝統舞踊」保持者
琉球舞踊「柳」、「苧引」を復活させ、後進の育成、指導に励む。
補足
房指輪
「苧引」は小道具を使用せず、両手とこまやかな指先の動きをともなう手踊りで演じるため、舞台前方で観覧していると微かに聞こえる房指輪(※3)の音色が余韻を残し、一層深い味わいを感じさせてくれます。
房指輪(※3)
琉球王朝時代より婚礼指輪として身に着けられ、また琉球舞踊の装飾品としても用いられてきました。
金細工、銀平打の指輪には「7つの縁起」が託されています。
・蝶型:天からのご加護がありますように
・桃型:健康で明るい日々が送れますように
・葉型:着る物に困らないように
・福花型:生活に彩りがあらわれますように
・扇型:福が広がりますように
・ざくろ型:子宝に恵まれますように
・魚型:食べ物に困りませんように
古典音楽
古典音楽のカテゴリーでは、「つなぎ節」、「清屋節」の曲目について解説しています。
「つなぎ節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 あたり苧やうみやりあたいをぅやうみやい はたいん布織やりはてんぬぬうやゐ 玉黄金里がたまぐがにさとぅが 御衣よすらねんしゅゆす ...
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「清屋節」- 古典音楽
工工四 印刷・保存 【工工四について】 歌詞 あたり苧の中ごあたいをぅぬなかぐ 真白ひき晒ちましらひちさるち 里があかいず羽さとぅがあけずばに 御衣よすらねんしゅゆすぃらに ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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