工工四
歌詞
神や仏も 守りて給へ
こんど日の本 はや上る
のぼり下りも 灘安かれと
もとの沖縄に はや帰る
訳
神様、仏様どうぞお守りください。
この度(旅)は日本へすみやかに出発し、
行きも帰りも海おだやかに
元の沖縄にすみやかに戻ること(をお祈りします)。
給へ
- ~してください
- 与えてください
こんど
- いま行っていること
- この次(最も近い将来)
※こんど = 今度 - 和歌ではこの度を”この旅”とかけて用いることがある。
日の本
- 日本国の異称
※”日本”という名を国号として正式に使い始めたのは七世紀後半頃と云われています。
はや
- すみやかに
- 早く
灘安かれ
- 海おだやかに
- 海路平穏に
解説
「坂原口説」は日本本土へ旅立つ航海の無事を祈願して詠まれた歌曲です。
現代における航海の安全性と比べ、かつて海に出ることは常に危険と隣り合わせでした。暴風雨や荒波、時に海賊の襲撃に遭遇するなど命がけの旅路となり、航海の無事を祈る気持ちは一層深いものであったことでしょう。
「坂原口説」の音数率は通常の口説(※1)とは異なり、江戸末期に流行した都々逸(定型詞)の七・七・七・五調との節回しであることから琉都型と呼び、大和言葉を用いて歌われます。
口説(※1)
七句と五句を繰り返すリズミカルな七五調に道行の情景を述べていきます。かつて日本本土より伝わった節まわしとされ、基本は大和言葉を用いて歌います。
補足
節名の由来
「坂原口説」の節名の由来は「前の浜」の舞踊曲として歌われる下記の一節から命名されています。
坂原口説(一節)
のぼり下りの 坂原越えて
もとの都に はや帰る
訳
上り下りの坂原を越えて、
もとの都に早く戻ってきた。
坂原
- 坂 = 傾斜のある土地、原 = 墾るの当て字。(諸説あり)
- 行政区画として整備するため、新たに開墾された土地に名付けられた地名。
※現住所としてはうるま市与那城平安座坂原が挙げられるが、同じ地名は県内に複数存在する可能性あり。(調査中)
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「坂原口説」が舞踊曲として演奏される「前の浜」について解説しています。
「前の浜」 - 古典舞踊/二才踊り
前之浜節:歌詞 ”エイエイえいえい” 前の浜にめぬはまに 前の浜にめぬはまに ちり飛びゆるちりとぅびゅる ”サさ” 浜千鳥はまちどぅり ”エイサえいさ” 友呼ぶ声はとぅむゆぶくいわ ちり ...
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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