工工四

【工工四について】
歌詞
1.
むんじゅる平笠 清らものや
みやらべまつぢに ちいゐせて
(清らものや)
花染手拭や 前に結で
二才惚らしもの
(花染やう)
2.
照喜名坂から やううなよ
むんじゅる平笠 かぶるなやう
(津波古の)
津波古の 主の前が
にや打惚れゆんだう
(津波古の)
3.
芋のまあさや 唐かんだ
米のまあさや 赤米地
(神酒造ての)
神酒造ての まあさや
白はい唐かんだ
(神酒造ての)
訳
1.
麦わらで作った平笠は清らかで美しいもの。
娘の頭にちょこんとのせて、
花染めの手ぬぐいは前に結び、
若者たちを虜にさせる。
2.
照喜名坂からは、娘さんよ、
むんじゅる平笠はかぶらないように。
津波古某(人名)のお役人が惚れ込んでしまうからね。
3.
芋の美味いのは唐芋、
米の美味いのは赤地米。
お神酒を造って美味いのは白い唐芋である。
むんじゅる平笠
- 麦わらで作った平笠
清ら
- 清らか
- 美しい
まつぢ
- 頭頂
二才
- 若者
- 青年
唐かんだ
- 唐芋 = サツマイモ
赤地米
- 畑米 = 粟国島で栽培された稲 - 参考:『琉舞手帖/大道 勇』
※史料によっては唐かち米と書記されている。
神酒
- 神に供えるお酒
解説
「むんじゅる節」は沖縄本島から北西約60kmに位置する粟国島が発祥の地で、島尻郡粟国村西にある洞寺公園には本曲の歌碑が建てられています。
島で歌われている「照喜名節」を原歌として、むんじゅる平笠をかぶった娘の清らかで美しい姿を詠んだ歌曲です。
粟国島の各地区によっては、「さがや節」、「糸喜名節」とそれぞれ異なった節名で呼ばれており、島に暮らす人々の生活の様子を軽快なリズムに囃子詞を掛け合いながら展開していきます。
補足
舞踊演目
仲毛演芸場(※1)で地謡をしていた稲嶺某が粟国島に渡り、本曲の原歌である「照喜名節」を習得した後、座の踊りの名優であった玉城盛重によって振り付けられた演目が現在の雑踊り(※2)「むんじゅる」であると云われています。
参考:『むんじゅる節の歌碑』より
仲毛演芸場(※1)
沖縄で最初の芝居小屋(現在の那覇市東町)
琉球王朝が崩壊した後、歓待芸能を職としていた者が率いて踊りを披露していました。
雑踊り(※1)
明治16年(1883)頃、琉球芸能が初めて入場料を取って興行がおこなわれて以来、芝居小屋で創作振り付けられた近代の舞踊。
略歴
■玉城盛重(1868-1945)
沖縄県那覇市首里に生まれる。
近代の沖縄芸能の大化であり、古典正統継承者。
代表する作品には、「谷茶前節」、「浜千鳥」、「むんじゅる」、「貫花」、「花風」、「加那ヨー」、「あやぐ」、「松竹梅」、「金細工」、「川平節」がある。
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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