工工四
歌詞
出砂のいべや 泉抱きもたへる
思子抱きもたへる とのち里之子
訳
出砂の御嶽は泉を抱くように鎮座している。
(同じように)我が子を抱いて守り育てる、とのち里之子。
出砂
- 那覇市から西北約60キロメートルに位置する渡名喜島から4キロメートル西方にある出砂島(無人島)。別名、入砂島とも呼ばれています。現在は島全体が米軍の演習場として使用され、爆撃で地平は荒廃し四か所あった御嶽はすべて消失しました。
いべ
- いべ = 忌部 = 神を祀る場所
とのち
- ”とのち”については文献史料によって諸説あり、殿内(格式のある屋敷)が由来している説や、”渡名喜”が転訛したという説がある。
里之子
- 15世紀頃より、琉球王府は位階制度と呼ばれる身分の序列を制定し、18世紀になると「九品十八階」の制度が確立される。里之子は一般士族の中級階層にあたり、功績を積んでいくと士族の最高位である親方の称号まで昇格することができる。身に着ける冠(ハチマチ)や簪(ジーファー)の色や素材によって等級、身分を区別していた。
解説
「出砂節」は島尻郡渡名喜村に属する出砂島を舞台に詠まれた歌曲です。
人々の生活には欠かすことのできない水源(泉)を囲むように鎮座している御嶽(※1)。
その風景に我が子を抱いてる里之子の姿を映し重ね、村集落の繁栄を祝います。
御嶽(※1)
神が存在、または来訪する聖域。
御嶽は森や川、島全体、他にも井戸や墓石などさまざまな形態があります。
木の繁みの中心に忌部石(神が来訪する標識)を配置しているところが多く見られます。
補足
シマノーシ祭
隣合わせに位置する渡名喜島では、旧暦四月に豊年や健康など島の繁栄を祈願するシマノーシ祭(島直し)と呼ばれる祭祀行事がおこなわれます。
出砂島には四か所の御嶽があり、渡名喜島の人々は神が来訪する島として古くより信仰の対象としていました。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「出砂節」が舞踊曲として演奏される「本嘉手久」について解説しています。
「本嘉手久」 - 古典舞踊/女踊り
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参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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