工工四
歌詞
1.
油買ふて給れ ぢはも買ふて給れ
捨て夫の見る前 みなでしやべら
2.
あだに垣だいんす 御衣かけて引きゆり
だいんすもとべらひや 手取て引きゆら
訳
1.
油を買ってください、簪も買ってください。
私を捨てた夫の見る手前、(見苦しい姿を見せたくないので)身だしなみを整えましょう。
2.
アダンの海垣でさえも着物をかけて引き寄せるのです。
ですから、もとは契りを交わした仲ならば手を取って引き寄せてくれましょう。
油
- 頭髪用の油
ぢは
- 簪 =結髪するための髪飾り。スプーンのような形状は整髪用の油をすくうために使用し、逆側の先端部は尖っているため護身用の武器に使われていた。
あだに垣(海垣)
- タコノキ科タコノキ属の海浜植物。パイナップルに似た果実をつけ、葉は鋭い棘を持つ。枝からは複数の支柱根が土に向かって生え風に強く倒れにくいことから人々の暮らしを守る防風防潮林としてアダンの木を植栽し海垣を築いている。
- 海垣は生物の生息域を形成し、ヤシガニ、オカヤドカリ、オカガニの住処、ウミガメの産卵などの環境保全にも役立っている。
だいんす
- ~でさえ
解説
「ソレカン節」は離縁した先夫に対する情動的な女性の心の機微を詠み込んだ歌曲です。
一度は夫婦の契りを交わしたご縁、別れてもかつて愛した夫の前では常に身なりを整えていたいと思う女心を描いています。
頭髪用の油で整髪し、髪飾りに用いるジーファは身分により異なった素材のものを選ぶ習わしがあり、王族は金、士族は銀、平民は真鍮や木製のジーファを挿していたそうです。
補足
逸話
ある日、男が急なにわか雨にあい軒先に駆け込んだところ、そこに元の妻であった女が雨宿りをしていました。
はじめのうちは気恥ずかし気持ちでそっぽを向いていましたが、つい茶目っ気を出してそっと袖を引いたら元の妻は驚いた様子でその場から立ち去っていきました。
折り悪く、そこを通りかかった築佐事(警察)に風紀を乱した罪で男は捕まってしまい、平等所(警察署兼裁判所)に訴えられてしまいます。
この一件について思索していると、そこに情け深いとされる具志川王子が事の経緯をお聞きになり、この歌を役人に示して諭したことが最終的な決め手となり、元は縁のあった夫婦なのだから罰することはなく無罪となったという逸話が残されています。
この具志川王子は”だいんす”の語をよく歌に用いたので、のちに「だいんす御前」という名がついたそうです。
参考:『嗣周・歌まくら/那覇出版社』
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「ソレカン節」が舞踊曲として演奏される古典演目「醜童(しよんだう)」について解説しています。
「醜童」 - 古典舞踊/打組踊り
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参考文献一覧
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