工工四
歌詞
あだね垣だいんす 御衣かけて引きゆり
だいんすもとべらひや 手取て引きゆら
訳
アダンの海垣でさえも着物をかけて引き寄せるのです。
ですから、もとは契りを交わした仲ならば手を取って引き寄せることもありましょう。
あだに垣(海垣)
- タコノキ科タコノキ属の海浜植物。パイナップルに似た果実をつけ、葉は鋭い棘を持つ。枝からは複数の支柱根が土に向かって生え風に強く倒れにくいことから人々の暮らしを守る防風防潮林としてアダンの木を植栽し海垣を築いている。
- 海垣は生物の生息域を形成し、ヤシガニ、オカヤドカリ、オカガニの住処、ウミガメの産卵などの環境保全にも役立っている。
だいんす
- ~でさえ
もとべらひ
- 昔、契りを交わした
解説
「サック節」は離縁した愛人に対する情動的な女性の心の機微を詠み込んだ歌曲です。
一度は契りを交わしたご縁、別れてもかつて愛した人を前にすると揺れ動かされる女心を擬人法を用いてアダンの植物に映し重ねて詠まれています。
元々「サック節」は三線音楽として作られたものではなく、御冠船(※1)で演じられる集団舞踊「入り子踊り」に構成されている歌謡でした。
御冠船(※1)
琉球国王の即位時に、冊封使(明、清の使者)を歓待する祝宴で演じられた諸芸能のことを指します。
皇帝より授けられた冠を携えて来航したことから「御冠船」という名がつき、1404年から1866年の間、計22回おこなわれました。
補足
入り子踊り
「入り子踊り」はいくつかの踊りを組み合わせて、円陣の中にさらに円陣を作って入り子形式で踊る演目です。
その歴史は古く、1604年に開催された豊国大明神臨時祭(豊臣秀吉七回忌を記念して)の舞踊図にその様子が描かれており、また、1719年の戌の御冠船では「入り子踊り」の演目名が記録されています。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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