工工四
歌詞
もいこ花小花 ものもいはぬばかり
露はうち向て 笑て咲きゆさ
訳
茉莉花の小さい花がまるで語りかけるように、
露を受けて嬉しそうに咲いている。
もいこ花
- 茉莉花、ジャスミン。1~3mほどの常緑低木に小さな白い花を咲かせるモクセイ科ソケイ属の植物。強く甘い芳香を持つことが特徴で、沖縄では日常的に飲まれている”さんぴん茶”の香り付けに利用されている。
解説
「昔嘉手久節」は限られた時間の中で懸命に花開く茉莉花の愛らしい姿を詠み込んだ歌曲です。
茉莉花は一年を通して一日だけ夜から翌日の昼頃まで花を咲かせる一夜花で、甘い香りを放ち小さな白い花を咲かせます。
最古の琉歌集である『琉歌百控』(※1)には「嘉伝古節」の節名で本曲の歌詞が収められており、出自には竜郷方之別 西嘉徳村(現在の奄美大島の北部に位置する大島郡竜郷町嘉渡)と記されており、琉球王国統治時代に伝承された歌であると考えられます。
『琉歌百控』(※1)
上編「乾柔節流」、中編「独節流」、下編「覧節流」の三部(全601首)からなり、1795年~1802年にかけて編纂された最も古い琉歌集です。
補足
逸話
「昔嘉手久節」の接頭語である「昔」に関する逸話が残されています。
以下、『嗣周・歌まくら/那覇出版社』より引用。
「昔嘉手久節」は御茶屋御人衆(※2)のお一人である国嶋親雲上の作です。
ある日、国嶋親雲上が「本嘉手久節」を演奏しようとして歌い方を忘れ、こうか ああかと弾きだしたのがこの曲で、誰ということなく昔節の節が入っているからとて、一番あとにできた節ですが「昔嘉手久節」としたそうです。
節名の頭にある「昔」と「本」はできた順序をあらわすものではありません。
御茶屋御人衆(※2)
摂政(国王の補助役)、三司官(行政の最高責任者)、お初め表十五人(国務大臣)をお勤めなされた方々、また諸奉行(諸行政機関の長官)などを退官なされた方々で、国王のお話相手を御茶屋御殿(迎賓館)で勤めたことにその名が由来します。
参考:『嗣周・歌まくら』那覇出版社
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る