工工四
歌詞
万歳かふすや やんざいかふすや
二月御穂立て 穂祭や
天より下りの
何の日取りや 良い日取り
米や重さり 石や軽さり
天より下りの
布織り上手の 綾織り男の
錦の金襴 唐苧の金襴
男の長者の 荷馬の長者の
荷負ひよはれて やんざよはれて
やんざやんざと 馬乗て通れば
一段とほめられた 今日も明日も御祝事よ
訳
万歳講者、行脚講者、
二月実りの穂祭りは、
天より降りて、
何の日取りか良い日取り(何時か吉日を選んで)。
(民家をまわって戴いた)米は重くて石は軽い。
天より降りて、
布織が上手で、綾織りが(巧みな)男(職人)が(仕立てた)、
錦の金襴、唐苧(からむし)の金襴(を着て)、
男の長者、馬に荷を背負った長者が、
荷負(お布施)を祝って、行脚(修行)を祝って、
「行脚(修行)、行脚(修行)」と馬に乗って通れば、
一段と(人々)から誉められた。今日も明日もお祝い事だ。
※歌詞の直訳のほか、文脈を補うため括弧内に補足を追記しています。
万歳講者、行脚講者
- 万歳講者(行脚講者)は家々を訪ねて門付芸能をおこなう芸人(京太郎)のことを指す。一説によると行脚村(現在の那覇市久場川町の東端)に居住しており、地名があんぎゃ(あんにゃ)であることから、あんじゃ、やんざいと転訛していったと云われている。参考:『南島方言史攷/ 伊波普猷』
- 『琴譜下巻/手登根順寛』には「万歳講者節」の節名で楽曲としての記録が残されている。
二月穂祭り
- 旧暦2月におこなわれる麦の豊作を祈願する神事。
綾織り
- タテ糸とヨコ糸を2本ずつ以上組み合わせ、布表面に斜めの模様柄を出す織法。別名、斜文織とも呼ぶ。
錦
- 金銀の糸をはじめ種々の色糸を組み合わせて華麗な文様を織り出す織法。
唐苧(からむし)
- 苧麻(植物)
長者
- 目上の者、年上の者
- 社会的地位、財産がある者
- 徳を備えた者
荷負
- 荷を担ぐ
- 荷を背負う
※歌詞の文脈と照らし合わせ、「芸を披露して得た謝礼(お米)を背負う」という解釈とする。
やんざ
- 行脚 = 僧侶が各地を歩いて修行すること。仏教用語が転用され、各地を巡り歩くことを指す。
解説
「萬歳かふす節」はかつて京太郎と呼ばれる芸人集団が島各地の家々を巡業し、門付芸能を披露していた様子を詠み込んだ歌曲です。
一説によると、京太郎は本土から流れて来た芸人集団のことで、首里郊外の行脚村(現在の那覇市首里久場川町の東端)に居住し、門付芸を演じて日々の生計を立てていたそうです。
お正月やお盆などのお祝い事になると京太郎が家の門に立ち、「万歳」の祝言、「馬舞」、「鳥刺し舞」の演目、仏と呼ばれる人形をたずさえて「人形芝居」を演じていました。
しかし、明治期になると社会の変遷とともに活動が廃れていき、ついには離散してしまったそうです。
補足
組踊
「萬歳かふす節」は組踊(※1)「万歳摘討」の演奏曲として構成されています。
組踊(※1)
琉球王国時代の1719年に踊奉行(式典の際に舞台を指揮、指導する役職)の任命を受けた玉城朝薫により創始された歌舞劇です。
台詞、舞踊、音楽の三つの要素から構成された古典芸能で、1972年に国の重要無形文化財に指定され、2010年には世界のユネスコ無形文化遺産に登録されました。
古典舞踊
古典舞踊のカテゴリーでは「萬歳かふす節」が舞踊曲として演奏される古典演目「高平良万歳」について解説しています。
「高平良万歳」 - 古典舞踊/二才踊り
萬歳口説:歌詞 1. 親の仇をうやぬかたちをぅ 討たんてやりうたんてい 万歳姿にまんざいすぃがたに 打ちやつれうちやつぃり 棒と杖とにぼうとぅつぃとぅに 太刀仕込でたちしくでぃ 2. 編 ...
続きを見る
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る