工工四
歌詞
秋ごとにみれば 庭の籬内に
嬉しごと菊の 花に宿かよる
露の玉みがく 月影の清らさ
訳
(毎年)秋になると庭の籬の内は、
喜ばしいことに菊の花が咲き、その花に宿借りる
露の玉に映し出された月の美しいことよ。
籬
- 竹や柴など、植物を編んで作った垣。ませ、籬とも呼ばれてる。
清さ
- 清らか
- 美しい
解説
「永良部節」は見ごろを迎えた菊の花に照り輝く月の美しさを讃えて詠み込んだ歌曲です。
月光に照らされ一段と美しさを増す菊の花に粛々と移りゆく秋の情景を映し重ねて描かれています。
通常、琉歌は”八・八・八・六”の計30音で詠われますが、本曲は”八”を2回加えた長歌形式で構成されています。
「永良部節」は奄美群島の沖永良部島が発祥の地とされ、琉球王国統治時代に伝承された歌であると考えられます。
節名は下記の原歌が由来となっています。
「永良部節」原歌
永良部潟原に こきみつのよててさ
若夏はまはだ 苧引晒しさるしやい
うみつなぎおたる わがはたひん胴衣きち
里とねなしゆたす 無蔵とねなしゆたす
とぶとやがうらめしや まぶとやがなまなきさ
歌詞全体の解釈は不明のため、わかる範囲で各単語の訳を記載します。
潟原
- サンゴ礁に囲まれた浅瀬(イノー)に砂や泥が堆積して形成された干潟。
こきみち
- クチミチャー = 小さい魚の名
苧
- 学術的には植物の苧麻(別名:からむし)のことを指しますが、沖縄本島では糸芭蕉に対しても同じく「苧」と呼んでいる。
里
- 「里」は女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に対して使うときは「無蔵」と呼ぶ。
引用:『ふるさとの歌』/著:与那覇政牛
補足
菊の節句
旧暦の九月九日(10月中旬)は”菊の節句”で、お酒を入れた盃に菊の葉を三枚浮かべた「菊酒」をお供えして家族の健康と長寿を祈願する習わしがあります。
また、月と日が奇数(陽)の数字で重なることから「重陽の節句」とも呼ばれています。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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