工工四
歌詞
をがば家と ばぬたがやどと 隣やれば
今日も見れ 明日も見れ かなし里やう
訳
あなたの家とわたしの家が隣であれば、
今日も見れて、明日も見れるのに、愛しい貴方よ。
をがば家
- をば(うば) = あなた
- あなたの家
ばぬたがやど
- ばぬた(ばんた) = わたしたち
- わたしたちの宿
- わたしの家 - 参照:『標音・評釈琉歌全集/武蔵野書院版』
かなし
- 愛しい
里
- 「里」は女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に対して使うときは「無蔵」と呼ぶ。
解説
「たうがね節」は遠く離れて暮らす愛しい人への恋情を切々と述べた歌曲です。
本曲は宮古島が発祥の地で、古くより歌い継がれてきた叙情歌「島タウガニ」が原歌とされています。
「島タウガニ」は歌い手によって自由に歌詞がつくられ、昔から島の生活の様々な場面を歌い上げてきました。
節名の由来については諸説ありますが、かつて島に実在した「唐金」という男の名前を起源とする説や、美しい音色を意味する「唐ヶ音」に因んでいるとする説があります。
「唐金」は美声の持ち主で歌の名手と評判を得て、いつしかその節が島内外に伝播したとされています。
また、三千首の琉歌を集録した『標音・評釈琉歌全集/島袋盛敏・武蔵野書院版』には九首の歌が収録されており、そのうちの一首は唐金のことを詠った作品で宮古に残された愛人の心がかりを綴った歌が収められています。
たをかね節(標音・評釈琉歌全集より)
たをかね主さり 沖縄の旅 さしてからや
池の魚の 水離れ かにすあるゑ
訳
たをかね主さま、あなたが沖縄に旅をされてからは、
(私はとても苦しくて)池の魚が水を離れたときは、こんなであろうかと思うほどでございます。
引用:『標音・評釈琉歌全集/島袋盛敏・武蔵野書院版』
補足
地域の歌謡祭
宮古島市に属する伊良部島では歴史文化の継承を目的とした歌謡祭「伊良部トーガニ」が毎年開催されます。
お祭りでは伊良部島で歌い継がれている「伊良部トーガニ」に加え、島の祝儀歌である「トーガニアヤグ」、「伊良部トーガニ」の原歌である「島タウガニ」の歌唱が披露されます。
宮古島では歌謡(唄)のことを「アヤグ」もしくは「アーグ」と呼び、美しい言葉の意味から「綾言」と名付けられたそうです。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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