工工四
歌詞
里があかいづばね 御衣すらんともて
けふのよかる日に かせよかけら
訳
愛しいあなたにとんぼの羽のように美しい着物を織って差し上げるため、
今日の縁起の良い日に綛をかけましょう。
里
- 「里」は女性が思いを寄せる男性に対して使う言葉。男性が思いを寄せる女性に対して使うときは「無蔵」と呼ぶ。
蜻蛉羽
- トンボの羽
よかる日
- 縁起の良い日
- 吉日
かせをかけら
- 紡いだ糸をH型の枠に巻き取って綛の状態(扱いやすく束ねる)にした後、機織に設置する糸巻きに必要な長さの糸を巻き付ける作業工程を指します。
解説
「昔田名節」は愛しい人へ着物を織って差し上げるため、縁起の良い日を選んで機織に綛をかける健気な女性の慕情を詠み込んだ歌曲です。
沖縄の気候に適した薄くて上質な着物を蜻蛉の羽に例えた趣深い歌詞が特徴的です。
「昔田名節」は伊平屋島の田名集落が発祥とされています。
補足
楽曲の変遷
最古の三線楽譜である『屋嘉比工工四』(※1)に収められている「モト田名ブシ」の楽譜が、現今の「昔田名節」とほぼ同一のものであることが確認できます。
また、「モト田名ブシ」の歌詞(琉歌)は現今の「本田名節」に引き継がれています。
一説によると、琉球王府の楽師を務めた知念績高によって「本田名節」が作り上げられたことにより、『屋嘉比工工四』(※1)に収録されている「モト田名ブシ」は今日の「昔田名節」に節名が替わったと云われています。《参考:『沖縄三線節歌の読み方』沖縄教販》
屋嘉比工工四(※1)
琉球音楽家の屋嘉比朝寄(1716-1775)によって編み出された記譜法により創案された現存する最も古い三線楽譜です。(117曲編纂)
略歴
■知念績高(1761-1828)
沖縄県那覇市首里桃原町に生まれる。
湛水流の奥平朝昌に師事し、その後、屋嘉比朝寄の「当流」を豊原朝典より学ぶ。
のちに屋嘉比工工四(117曲)に46曲を追加し、芭蕉紙工工四を完成させる。
弟子には、安冨祖流を創設した安冨祖正元や野村流を創設した野村安趙がいる。
二回にわたり琉球王府の楽師を務めた。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
続きを見る