工工四
歌詞
鳩間中森 走り登り
こばの下 走り登り
(囃子)
ハイヤヨゥ ティバ カイダキ シトゥルトゥ
テンヨー サティミグトゥ
訳
鳩間島の中岡を走って登り
クバの下を走って登り
(囃子)
南の方は美しい山なみが手に取るように見えて素晴らしい景観である
鳩間
- 鳩間島 = 沖縄本島より南西約400km離れた八重山諸島に位置する離島。
- 西表島より北方に浮かぶ周囲3.5kmの小島。
- 鳩間島の由来は鳩が多く生息する島に因んでいる。
中森
- 鳩間島に立つ標高34mの小高い丘
- 中森 = 中岡とも呼ぶ
こば
- ヤシ科の常緑樹、別名ビロウと呼ぶ。
解説
鳩間島にはクバが群生する3つの森があり、中央に位置する小高い丘を「鳩間中森」と呼び、島の憩いの場所として大切に守られてきました。
「鳩間節」はこの「鳩間中森」から見晴らす西表島の景観を賛美して詠まれた歌曲です。
鳩間島では旧暦八月になると五穀豊穣をはじめ、諸々の祈願を結ぶ「結願祭」がとりおこなわれ、奉納芸能では丘の名をとった「鳩間中森」の祝儀舞踊があり、古装にタラシ花を頭から背中に流し四つ竹をもって優雅に演じられます。
補足
舞踊演目
祭礼の場で継承されてきた奉納舞踊「鳩間中森」を原曲に軽快なテンポにアレンジして振り付けられた踊りが近代に創作された雑踊り(※1)「鳩間節」になります。
歌詞は四番まであり、「鳩間中森」を舞台に当時の人々の生活様式が描かれています。
かつて鳩間島は水田を耕すことが困難な土地柄であったため、隣の西表島まで舟に乗って通い耕作をおこなっていました。
収穫した稲や粟を満載に積んで浜を行き交う光景に、島の繁栄を祈る人々の願いが込められています。
雑踊り(※1)
明治16年(1883)頃、琉球芸能が初めて入場料を取って興行がおこなわれて以来、芝居小屋で創作振り付けられた近代の舞踊。
琉球王朝が崩壊した後、歓待芸能を職としていた者が率いて踊りを披露していました。
鳩間節
1.
同上
2.
美しやむりたる 岡のこば
美らさつれたる 頂のこば
3.
稲穂積みつけ 面白や
粟穂積みつけ さて見事
4.
前の渡よ 見渡せば
往く船来る船 面白や
訳
1.
同上(※2番以降、囃子省略)
2.
美しく生い茂った森のクバよ、
美しくならんだ頂上のクバよ。
3.
稲を積み重ねて、なんと素晴らしいことか
粟を積み重ねて、なんと見事なことか。
4.
前の海を見渡せば、
行く船、来る船が行き交い、たいそう趣がある。
美しや
- 美しい
※「愛しい」、「可愛らしい」などの愛情表現を含んだ意味合いで用いられる。
美ら
- 綺麗
- 美しい
- 清らか
※一説によると、清ら"の字をあてることが正しいとのこと。
むりたる
- 生える
つれたる
- ならんで
面白や
- 趣がある
- 風流である
- 素晴らしい
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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