工工四
歌詞
仲村渠そばいど 真簾は下げて
あにあらはもとまば 忍でいまうれ
訳
仲村渠家の裏戸の簾を下げておきますから、
確認したら人目につかぬようにいらしてください。
仲村渠
- 伊江島にある旧家の名前。
- 村集落の中央に位置する場所を仲村渠と呼んでいた。
そばいど
- 裏戸
- お手洗い場の戸口
あにあらはもとまば
- そうと思ったら
解説
「仲村渠節」は沖縄本島から北西約9kmに位置する伊江島が発祥の地で、国頭郡伊江村東江上にあるリリーフィールド公園には本曲の歌碑が建てられています。
創作された背景には島に伝わる「マカト物語」の一幕に結びつきがあると云われています。
伊江島の由緒ある家柄に仲村渠真嘉戸という美童がおり、その娘には互いに思いを寄せる恋人がいました。
しかし、二人の逢引を良く思わない両親に厳しく監視され、密かに会うために簾を合図に利用したロマンスが「仲村渠節」に描かれています。
また、恋人の名を「北の松金」と呼び、後に琉球国王となる尚円王(在位:1469年 - 1476年)であるとの言い伝えが残されています。
補足
一名小橋
本曲は別名「一名小橋」と呼びます。
「一名」とは”またの名”、”別名”という意味を持ち、「小橋」は「仲島」に架けられていた橋を指しています。
「仲島」は現在の那覇市泉崎の周辺に位置し、かつては海に浮かぶ小島で首里王府によって遊郭が公的に設置されていた場所でしたが、その後、埋め立てにより陸地になりました。
三千首の琉歌を収めた『標音・評釈琉歌全集 /武蔵野書院版』には五十五首の「仲村渠節」が収録されており、そのうちの十三曲は「仲島」を舞台にした琉歌が詠まれています。
その中から「小橋」を詠み込んだ一節をピックアップします。
仲村渠節(一名小橋)
たとひ仲島や 音絶えてをても
いつす名の朽ちゆが 恋の小橋
訳
遊郭仲島は、たとえ評判がなくなっても、
いつ朽ちるということがあろうか、恋の小橋。
音絶えてもをても
- 音沙汰がなくなっても
- 評判がなくなっても
替え歌
旋律が借用され、原歌と替え歌の関係が派生したのは最古の歌謡が集録されている「おもろ」の時代からであり、今日に至るまで一つの伝統形式として成り立っています。
『おもろさうし』 は12世紀から17世紀にかけて島々で詠われていた歌謡を採録し、1531年から1623年にかけて編纂された最古の歌謡集です。
「おもろ」の語源は 「思い」 を意味します。
参考文献一覧
書籍/写真/記録資料/データベース 当サイト「沖縄伝統芸能の魂 - マブイ」において参考にさせて頂いた全ての文献をご紹介します。 尚、引用した文章、一部特有の歴史的見解に関しては各解説ページの文末に該 ...
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